「風営法の申請を準備しているが、もし不許可になったらどうしよう」「不許可って実際どのくらいの確率で起きるの?」——風俗営業許可は許可制で審査が厳格なため、こうした不安を抱える方は多いと思います。

風営法の不許可は、実は不許可になる理由が決まっています。13年間、広島県警察官として現場で見てきた経験から言うと、ほとんどの不許可案件は5つの典型パターンのどれかに当てはまります。

この記事は、西岡行政書士事務所代表・西岡祐也(元広島県警察官)が、現役時代に見てきた不許可・差し戻し事例をもとに、典型パターンとその対処法をお伝えするものです。これから申請を控えている方、すでに申請中で不安を抱えている方の参考になれば幸いです。

風営法不許可の典型パターンは「欠格事由」「立地不適合」「構造設備の不備」「書類の虚偽・不備」「管理者要件不充足」の5つです。すべて事前確認で回避可能なので、申請前の段階での専門家チェックが極めて重要です。

1. なぜ風営法は不許可になりやすいのか

風営法の風俗営業許可は、深夜営業届出(届出制)と違って厳格な審査を伴います。

「許可制」の本質

項目届出制(深夜営業届)許可制(風営法)
審査の厳しさ形式審査のみ実体審査あり
手続き期間即日〜数日約2ヶ月
不許可の可能性原則ないあり
申請手数料0円24,000円(不許可でも返還なし)

許可制は「公共の安全のために、一定の要件を満たす人だけに営業を認める」という性格の制度です。だからこそ、要件に1つでも欠けがあれば不許可となり、24,000円の手数料も返ってきません。

不許可の実態

僕が現役時代に見ていた範囲では、年間で見ると新規申請の数件は不許可となっていました。割合としては決して高くありませんが、不許可になった経営者の精神的・金銭的ダメージは計り知れません。

物件契約を済ませ、内装工事も完了し、スタッフも採用した状態で「不許可」となれば、すべてが無駄になります。だからこそ、申請前の段階で「不許可リスクがないか」をしっかり確認することが、想像以上に重要なのです。

2. パターン1:申請者の「欠格事由」が見落とされている

Pattern 01

最も多い不許可パターンが、これです。

風営法上の欠格事由(代表例)

区分内容該当期間
過去の犯罪歴禁錮以上の刑の前科執行終了から5年以内
風営法違反歴風営法に基づく処分歴5年以内
反社会的勢力暴力団員・関係者現在進行形+脱退から5年以内
経済的不安定破産手続き中(復権なし)復権を得るまで
年齢要件未成年者・成年被後見人該当中

現役時代に見たケース

「自分には犯罪歴なんてない」と思っていた経営者の方が、申請後に「過去5年以内に略式起訴されていた事実」が発覚して不許可になったケースがありました。本人も忘れていた古い案件で、申請後の身辺調査で明らかになったのです。

法人の場合は、役員全員が欠格事由のチェック対象になります。代表者本人はクリアでも、役員の1人に問題があれば不許可です。役員に過去のトラブルがある人物を入れていることに気づかず、申請後に発覚するケースも見てきました。

どんなに上手に嘘をついても、警察には必ずわかる

元警察官の率直な意見

逆に言うと、どんなに上手に嘘をついても警察に犯罪歴はわかってしまう——ということを考えるべきだと僕は思います。

例えば、法人が風営法許可を申請しようとしたとき、役員の方の1人に前科があったとします。とても言いづらく、その場では「私に前科などありません」と言ってしまうかもしれません。しかしながら、このまま手続きが進むと、要件に反した状態であることが理由で不許可となります。

後からわかってしまうと、会社内での様々な印象も悪くなってしまうかと思います。なので、そういった場合は先に申告しておくことをお勧めします。

当事務所の重要ルール:「未申告の前科」だけは不許可でも報酬を頂きます

当事務所の方針

僕の事務所で風営法許可申請を依頼された場合、この理由でのみ唯一、不許可となっても報酬をそのままいただくものとなります。他の理由は申請段階で判明するからです。この理由だけは、申告をしていただかないとわからないことが理由です。

対処法:申請前の正直な棚卸し

欠格事由の確認は、申請前の段階で「過去のトラブルを正直に棚卸しする」ことから始まります。

「行政書士に正直に話すのが恥ずかしい」と感じる方もいますが、専門家は守秘義務を負っているので安心して相談してください。事前に分かれば、別の役員構成にする・申請者を別の人にするなどの対応で、不許可を回避できる場合が多いです。

3. パターン2:物件の「立地不適合」が事前確認されていない

Pattern 02

第7記事「風俗営業許可の費用相場」でも触れましたが、物件の立地問題は不許可パターンの2番目に多いです。

立地で問題になる2つの軸

内容
用途地域物件が「営業可能な用途地域」にあるか
保護対象施設学校・病院・図書館等から必要距離が確保されているか

よくある誤解

「物件の不動産屋さんが『大丈夫』と言っていたから」と物件契約をした後、申請段階で初めて「営業できないエリアでした」と判明する場合が、現役時代に何度もありました。

不動産屋さんは物件取引のプロですが、風営法の用途地域や保護対象施設の判定は専門外です。「夜のお店ができる物件です」と言われても、それは深夜営業届のレベルの話で、風営法許可となるとまた別の判断基準があるのです。

保護対象施設の落とし穴

特に注意したいのが、用途地域によって保護対象施設までの必要距離が変わることです。

用途地域保護対象施設からの距離
商業地域50m
近隣商業地域100m
その他(許可可能エリア)100m

物件のすぐ近くに小学校があるのに気づいていない、児童福祉施設の存在を見落としていた——こうしたケースは決して珍しくありません。例えば、広島の繁華街でも病院があったりしますから、油断は禁物です。Googleマップで分かる範囲の確認だけでなく、半径100m以内を実地で歩いて確認する慎重さが必要です。

対処法:物件契約前の立地調査

理想は、物件契約前の段階で立地調査を行うことです。

物件契約前なら、不適合と分かっても契約を見送るだけで済みます。契約後だと、敷金・礼金・仲介手数料がすべて無駄になります。実際に歩いてみてみることが、何より大切です。

4. パターン3:「構造設備の基準」を満たしていない

Pattern 03

風営法の許可では、店舗の構造設備が細かく規定されています。これを満たさないと不許可になります。

主な構造設備基準

項目基準
客室の数・面積1号営業:1部屋でも可。客室面積は適正に確保
客室の見通し客室内に見通しを妨げる構造物がないこと
区画の高さ客席を仕切る場合、高さ1m以下まで
照度1号営業:5ルクス以上を保てる照明設備
音響騒音規制基準を満たす構造
出入口客の出入口は道路に面していること

現役時代に見た典型ミス

申請書類の図面では基準を満たしているように見えるのに、実際の現地確認で基準違反が発覚するケースがあります。

図面上実態
「仕切り:高さ80cm」と記載実際は120cmのソファで仕切られていた
「客室1部屋」と記載実際はパーテーションで2部屋に分かれていた
「照明設備:5ルクス以上」と記載実際の点灯時の照度が4ルクス未満

警察は申請後に必ず現地確認を行います。図面と実態が違えば、その場で指導されるか、悪質と判断されれば不許可となります。

対処法:図面作成は実測ベースで

構造設備基準を確実に満たすには、内装工事の段階で「風営法基準を満たした設計」をすることが重要です。

「内装が完成してから申請」ではなく、「申請を見越した内装設計」が、結果的にスムーズな許可取得につながります。

注意:不動産屋さんからもらった図面は、必ず実測と比較してください

業界の現場から

申請者さんが不動産屋さんから申請用の図面をもらっていることがあります。つまり、不動産屋さんもよく飲み屋さんに物件を貸しているから、申請に図面が必要なことを知っているんですね。

依頼主から僕にその図面を渡していただいて、後に実際に僕が開業予定の物件の確認をさせてもらうと、なんと申請に不都合な部分が消されていたり、実際の寸法と違っていたりすることがほとんどです。

不動産屋さんも経験がありますから、良かれと思って、もしくは依頼主さんにばれないように図面に工夫を加えているのだと思います。もちろん、そんな図面では申請できませんから、図面は作り直さなければなりません。

不動産屋さんから図面を頂いた場合は、必ず現実の物件と比べましょう。

不安なら、申請前にご相談ください
「不許可になりそうか不安」「正式依頼の前に、見込みだけ知りたい」段階のご相談を歓迎しています。
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5. パターン4:書類の「虚偽記載・重大な不備」がある

Pattern 04

書類審査の段階で発覚する不許可パターンです。

不許可になる書類問題

種類具体例
虚偽記載営業内容を実態と異なる形で記載
重大な記入漏れ申請者情報・店舗情報の欠落
添付書類の偽造住民票・登記簿等の改ざん
整合性の欠如申請書と図面で異なる情報

「虚偽記載」の落とし穴

意図的な虚偽記載はもちろん不許可ですが、「これくらいなら大丈夫だろう」という認識のズレが結果的に虚偽となるケースもあります。

警察は申請内容を関係書類と照合して確認します。実態とズレがあれば、その時点で「信頼できない申請者」と判断され、不許可の方向に動きます。

対処法:実態と書類の徹底的な一致

書類を作る際の鉄則は、「実態通りに正直に書く」ことです。

「正直に書いて不許可なら、最初から営業形態を変えるべき」という判断ができます。虚偽で通そうとすると、後で発覚した時のダメージのほうが大きいのです。

警察官時代の現場目撃:実態と届出の乖離

現場の目撃談

警察官時代、通報でお店に行くと深夜営業届で営業しているお店なのに客席に女性店員さんが座り、客の隣で接客している場面を何度も見ました。店員さんもいつもしている接客スタイルなので、特に悪いことをしている様子でもありませんでした。

もちろん、こういった場合風営法の違反となります。違反にならないように、店員さんにも細かな周知が必要です。

6. パターン5:「管理者要件」を満たしていない

Pattern 05

意外と見落とされやすいのが、管理者の要件です。

風営法上の管理者とは

風営法では、各営業所に「管理者」を1名置くことが義務付けられています。管理者は店舗の風営法遵守を実質的に管理する責任者です。

管理者の要件

要件内容
欠格事由なし申請者と同様の欠格事由に該当しないこと
管理能力営業所を実質的に管理できる立場・能力
常駐性営業時間中、店舗で実質的に管理できること
業務専従他の営業所の管理者を兼務しないこと(原則)

現役時代に見た不許可ケース

「名前だけの管理者」を立てて申請するケースで不許可になったケースがありました。

警察は管理者の実態を、申請者・管理者本人・近隣関係者からのヒアリングで確認します。「形だけの管理者」と判断されれば、申請者本人に問題がなくても不許可になります。

対処法:管理者は実質的に機能する人を

管理者を選ぶときは、次の条件を満たす人を立てましょう。

管理者候補が見つからない場合は、申請者本人が管理者を兼ねることもできます。ただし、申請者が常駐できない場合は、開業時期を見直してでも適切な管理者を確保するべきです。

7. 5つのパターンを総合的に防ぐために

ここまで5つの典型パターンを見てきましたが、すべてに共通する対策があります。

申請前の「事前確認チェックリスト」

確認項目確認方法
申請者・役員の欠格事由過去5年の経歴を正直に棚卸し
物件の用途地域都市計画情報サービスで確認
保護対象施設からの距離半径100m以内を実地調査
店舗構造の基準適合内装工事前に専門家に図面チェック
書類の実態適合申請内容と実態の一致を再確認
管理者の要件常駐性・能力・兼務の確認

このチェックリストを、申請の2ヶ月前までに完了させるのが理想です。問題があれば、その時点で対応策を検討できる時間的余裕があるからです。

「事前相談」の活用

警察署の生活安全課は、風営法の事前相談に応じてくれます。物件の立地が問題ないか、構造設備が基準を満たすか、申請前に確認することで、不許可リスクを大幅に下げられます。

行政書士も、申請前の事前確認に対応しています。「正式に依頼する前に、見込みだけ知りたい」という相談も歓迎する事務所が多いはずです。

不許可になった場合の選択肢

万が一不許可になった場合、いくつかの選択肢があります。

選択肢内容
不服申立て不許可処分に対する行政不服審査法の手続き
再申請不許可理由を解消したうえで再度申請
業態変更深夜営業届やその他の業態への変更
申請者変更法人化・役員交代等で申請者を変える

ただし、これらはすべて「不許可になってから」の話です。手数料24,000円・準備に費やした時間・物件契約のコストを考えると、最初から不許可を回避する努力をするほうが圧倒的に効率的です。

8. よくある質問(FAQ)

ここでは、当事務所に実際あった質問を思い出してまとめました。

過去の犯罪歴は、どのくらい昔のものまで影響しますか?
禁錮以上の刑については、執行終了(出所・執行猶予の経過等)から5年が経過すれば欠格事由から外れます。罰金刑は欠格事由に該当しないことが多いですが、風営法違反の罰金は5年間の欠格事由になります。古い案件でも、当時の処分内容を確認することが重要です。
申請してから不許可と分かるまで、どのくらいの期間がかかりますか?
標準処理期間は約55日です。多くの不許可案件は、この期間内に警察側の調査で発覚します。ただし、申請後すぐに不許可と判明する明らかなケース(欠格事由の発覚等)は、申請から1〜2週間で連絡が来ることもあります。
不許可になった後、すぐに再申請はできますか?
不許可理由が解消されていれば再申請できますが、再度手数料24,000円が必要です。また、警察側の心証としては「不許可になった申請者」というマイナス評価がついている可能性があるため、再申請の準備はより慎重に行う必要があります。
「不安なので相談だけ」は受けてもらえますか?
当事務所は受けています。「自分が欠格事由に該当するか不安」「物件は決まっていないが事前に確認したい」といった段階のご相談を歓迎しています。正式依頼の前段階での相談こそ、不許可を防ぐ最大のチャンスだと考えているからです。
行政書士に依頼すれば、不許可は絶対回避できますか?
「絶対」とは断言できません。行政書士は事前確認で不許可リスクを大幅に下げられますが、申請者本人の欠格事由など、本人が情報を出さないと分からない要素もあります。逆に言えば、行政書士に正直に情報共有していただければ、ほとんどの不許可リスクは事前に発見可能です。

9. まとめ

風営法申請の不許可パターンについて、ポイントを整理します。

風営法の不許可は、避けようと思えば避けられるリスクがほとんどです。「まあ大丈夫だろう」で進めるのではなく、一つひとつ事前確認することが、許可取得への確実な道です。