「キャバクラを開業したいが、許可取得にいくらかかるのか?」「行政書士に頼んだ場合と自分でやる場合、費用差はどのくらい?」——風俗営業の開業を検討する段階で、誰もが直面する疑問です。
ネットで調べると「20万円から」「30万円が相場」など事務所によって金額にばらつきがあり、何が含まれるのか分かりにくいのが実情です。さらに、深夜営業届出(手数料無料)と違って風営法許可には警察への手数料24,000円が必要なので、最低限かかる費用も変わってきます。
この記事では、広島県内で風俗営業許可を取得する場合の費用相場、自分で手続きする場合に必要な実費、業態(1号〜4号営業)による費用差、そして「結局どちらがお得なのか」の判断材料を、行政書士の視点から整理してお伝えします。
警察への手数料は24,000円(業態によって異なる)。行政書士に依頼する場合の報酬相場は15万円〜30万円程度。深夜営業届出(無料・6〜15万円)と比べて、トータルで2倍程度の費用がかかります。
1. 風俗営業許可にかかる費用の全体像
まず、風俗営業許可にかかる費用は大きく分けて3種類あります。
| 費用区分 | 内容 | 金額の目安 |
|---|---|---|
| 手数料 | 警察署への申請手数料 | 24,000円(業態により変動) |
| 実費 | 住民票・登記簿などの取得費用 | 数千円〜2万円程度 |
| 報酬 | 行政書士に依頼する場合の費用 | 15万円〜30万円程度 |
風俗営業許可で深夜営業届出と決定的に違うのは、警察への手数料24,000円が必須になることです。これは行政書士に依頼してもしなくても、必ず発生する費用です。
ですので、自分で手続きをする場合でも最低3〜5万円、行政書士に依頼すると18〜35万円程度のトータル費用を見ておく必要があります。
2. 警察署への手数料:業態ごとの違い
風俗営業許可の手数料は、以下のとおりです。
業態別の手数料一覧
| 業態 | 該当区分 | 手数料 |
|---|---|---|
| キャバクラ・ホストクラブ・スナック(接待あり) | 1号営業 | 24,000円 |
| ムードバー・カップル喫茶 | 2号営業 | 24,000円 |
| 個室バー・区画席飲食店 | 3号営業 | 24,000円 |
| パチンコ店・ゲームセンター・麻雀店 | 4号営業 | 24,000円 |
2026年現在、1号〜4号すべての風俗営業許可申請で、新規申請手数料は24,000円となっています。これは広島県警に直接納付する金額で、収入証紙等で支払います。
広島中央警察署での支払い場所
恐らく広島県内で一番風営法の申請が多い広島中央警察署では、入り口から入って左側、交通課の窓口を過ぎたところで支払います。多分、案内してくれるとは思うのですが、念のため記載しておきます。
変更許可の場合の手数料
すでに許可を取得していて、構造を変更したい場合などには変更許可申請の手数料が必要です。広島県警の規定では9,900円となっており、新規申請より低額に設定されています。
3. 自分で手続きする場合にかかる実費
「全部自分でやる」と決めた場合、必要になる実費を見ていきます。
個人事業主として申請する場合
| 項目 | 費用の目安 |
|---|---|
| 警察署への手数料 | 24,000円 |
| 住民票(本籍地記載) | 300円〜450円 |
| 身分証明書(本籍地役場で取得) | 300円〜450円 |
| 登記されていないことの証明書 | 300円 |
| 飲食店営業許可証の写し | 0円(コピー代のみ) |
| 図面作成用具 | 1,000円〜3,000円 |
| 印鑑証明 | 300円〜450円 |
| 警察署への交通費 | 数百円〜数千円 |
| 合計 | 約27,000円〜30,000円 |
法人として申請する場合
| 項目 | 費用の目安 |
|---|---|
| 警察署への手数料 | 24,000円 |
| 法人の登記事項証明書 | 600円(窓口)/500円(オンライン) |
| 役員全員分の住民票 | 300円〜450円 × 人数 |
| 役員全員分の身分証明書 | 300円〜450円 × 人数 |
| 役員全員分の登記されていないことの証明書 | 300円 × 人数 |
| 定款の写し | 0円(手元の原本コピー) |
| 図面作成用具 | 1,000円〜3,000円 |
| 警察署への交通費 | 数百円〜数千円 |
| 合計 | 約28,000円〜35,000円(役員2名想定) |
役員が多い法人ほど、書類取得費用が増えていくのがポイントです。役員5名の法人なら、役員関連書類だけで5,000〜7,000円程度になります。
深夜営業届出との比較
第2記事「深夜営業届出の費用相場」で解説した通り、深夜営業届出には警察手数料がかかりません。両者の実費を比較すると次のようになります。
| 区分 | 深夜営業届出 | 風俗営業許可 |
|---|---|---|
| 警察手数料 | 0円 | 24,000円 |
| 実費(個人) | 約2,000円〜5,000円 | 約27,000円〜30,000円 |
| 実費(法人) | 約3,000円〜8,000円 | 約28,000円〜35,000円 |
風俗営業許可は許可制で審査が厳格なため、必要書類も多く、結果的に実費総額は深夜営業届出の5〜6倍程度になります。
4. 行政書士に依頼した場合の費用相場(広島市内)
次に、行政書士に依頼した場合の報酬相場を見ていきます。
業態別の相場感
| 業態 | 報酬相場 |
|---|---|
| 1号営業(キャバクラ・スナック等) | 15万円〜25万円 |
| 1号営業(ホストクラブ・複雑な構造) | 20万円〜30万円 |
| 2号営業(低照度飲食店) | 18万円〜25万円 |
| 3号営業(区画席飲食店) | 20万円〜28万円 |
| 4号営業(ゲームセンター等) | 20万円〜35万円 |
| 4号営業(パチンコ店・大型店舗) | 30万円〜50万円 |
業態によって金額に幅があるのは、書類の複雑さと図面作成の手間が違うためです。特にパチンコ店のような大型店舗は、図面作成だけでも数日かかるため、報酬も高めに設定されます。
報酬に含まれる業務の内訳
行政書士に依頼した場合、一般的に次のような業務が含まれます。
- 物件の事前調査(用途地域・保護対象施設からの距離測定)
- 必要書類のリストアップと取得サポート
- 平面図・求積図・音響構造図の作成
- 営業所周辺地図(保護対象施設明示)の作成
- 申請書類一式の作成
- 警察署への提出代行
- 警察による現地確認の立ち会い
- 許可証交付までのフォロー
風俗営業許可の場合、深夜営業届出より図面要件が厳しく、保護対象施設(学校・病院・図書館等)からの距離測定も必要になるため、専門的な作業が増えます。
当事務所の料金例(流川エリアの場合)
一例として、流川のビルの一室のバー・スナックくらいの規模ですと、当事務所では上記すべてを合計して15〜20万円で承っています。額が変動する理由は、申請者が法人で役員分の住民票を取得するのに手間がかかったり、お店に置く物件が多いなどで図面作成の難易度が高いといった事情です。
5. 「自分で」と「行政書士依頼」のトータルコスト比較
実費だけで比べると、自分でやる方が圧倒的に安いように見えます。ただ、判断材料は金額だけではないはずです。
トータルコスト比較
| 比較項目 | 自分で手続き | 行政書士に依頼 |
|---|---|---|
| 警察手数料 | 24,000円 | 24,000円 |
| その他実費 | 約3,000円〜10,000円 | 約3,000円〜10,000円 |
| 行政書士報酬 | 0円 | 15万円〜30万円 |
| 所要時間(自分の作業時間) | 40〜80時間 | 2〜5時間(打ち合わせのみ) |
| 図面作成の負担 | 大きい(音響構造図等の専門的な要件あり) | なし |
| 不許可リスク | 高い(欠格事由の見落とし等) | 低い |
| 警察対応・現地確認の立会い | 自分で対応 | 任せられる |
| 物件選定段階のアドバイス | なし | 受けられる |
風営法許可で「自分でやる」が困難な理由
深夜営業届出は「届出」なので、書類が形式的に揃っていれば受理されます。しかし風俗営業許可は「許可」なので、警察による厳格な審査があります。
| 審査される内容 | 内容 |
|---|---|
| 営業所の構造設備基準 | 客室の広さ・見通し・照度・音響等の細かい基準 |
| 立地基準 | 保護対象施設(学校・病院等)からの距離 |
| 申請者の欠格事由 | 過去の犯罪歴・暴力団関係・破産歴等 |
| 管理者の適格性 | 風営法の知識・店舗管理能力 |
これらすべての要件を、申請者自身が完璧に把握して書類化するのは、現実的にかなり難しいのが実情です。「書類が一通り揃っているように見えるが、実は不許可要件に該当していた」というケースが、風俗営業許可では発生しやすいのです。
6. 元広島県警察官の視点:費用を抑えるための「事前確認」のポイント
僕は元広島県警察官として13年間勤務しました。その経験から、結果的に費用を膨らませない「事前確認」のポイントをお伝えします。
ポイント1:物件契約前の「保護対象施設」確認
風俗営業許可で最も多いトラブルが、物件契約後に「保護対象施設からの距離が足りない」と判明するケースです。
| 保護対象施設 | 必要な距離(広島県の場合) |
|---|---|
| 小学校・中学校・高校 | 用途地域により50m〜100m |
| 図書館 | 用途地域により50m〜100m |
| 児童福祉施設 | 用途地域により50m〜100m |
| 病院・診療所 | 用途地域により50m〜100m |
物件契約してから「距離不足で許可が取れません」と判明すれば、契約金・敷金・礼金・内装工事費が無駄になります。実費数千円の保護対象施設調査を惜しんだために、数百万円の損失になるケースを実際に見てきました。
ポイント2:申請者の欠格事由の事前確認
風俗営業許可には、申請者本人や役員に「欠格事由」があると不許可になります。代表的なのは次の通りです。
- 過去5年以内の風営法違反による処分歴
- 過去5年以内の禁錮以上の刑の前科
- 暴力団関係者であること(または5年以内に脱退した者)
- 破産手続き中(復権を得ていない者)
- 未成年者(成年被後見人含む)
「自分には関係ない」と思っていても、若い頃の犯罪歴が引っかかるケースもあります。法人の場合は役員全員が対象になるため、誰か1人でも該当すれば不許可です。
これらの事前確認を怠ると、申請費用30万円超を払った後で「不許可」となり、すべてが無駄になります。事前に専門家に相談すれば、別の役員構成にする等の対応ができたケースも多くあります。
ポイント3:「図面ミス」による再申請のコスト
風営法許可で意外と多いのが、図面の不備による差し戻し→再申請です。手数料24,000円は再申請のたびに必要になるため、3回差し戻されれば 24,000円 × 3 = 72,000円が無駄になります。
警察官時代の経験から言うと、自分で図面を作成して提出された方の差し戻し率は、行政書士経由と比べて圧倒的に高いです。「節約のつもりで自分で作って、結局再申請を繰り返して費用も時間も損した」というのが、よくあるパターンです。
費用を抑えるための「節約」が、結果的に高くつく——風俗営業許可ではこれが起こりやすいことを、警察官時代の経験から強くお伝えしておきたいと思います。
7. よくある質問
当事務所では、当事務所の責任によって不許可となった場合には報酬額はいただきません。例えば、僕やスタッフが書類をわざと出さなかったりしたときです(そんなことをしたら訴えられてしまいますよね?)。
しかしながら、風営法の許可申請は「何度書類を間違っても修正すれば通る申請」です。申請者の方が要件に合わない時以外は、書類を間違わなければ通るのです。なので敢えて「申請が通らなければ報酬はいただかない」という当然なことは、あまりお伝えしていません。
逆に、このように絶対に通る申請なのにも関わらず、「不許可となったら報酬額はお返しする」とまるで親切のように装う行政書士事務所に、僕は不信感を覚えています(建設業などでも同じです)。
8. まとめ
風俗営業許可の費用について、ポイントを整理します。
- 警察手数料は24,000円(業態問わず)、これは行政書士依頼時も必須
- 自分で手続きすれば実費27,000円〜35,000円、行政書士依頼で18万円〜35万円
- 深夜営業届出と比べて、トータルコストは2倍以上になる
- 物件選定の段階での事前確認(保護対象施設・欠格事由)が、費用を抑える最大のポイント
- 「節約のつもりの自力申請」が再申請の連鎖で結果的に高くつくケースが多い
風俗営業許可は深夜営業届出よりハードルの高い手続きです。「いくらかかるか」だけでなく、「どこにコストをかけるべきか」「どこを省くと逆に高くつくか」の判断が、開業準備全体のコストを左右します。