「これから広島でバーを開きたい」「居酒屋を遅い時間まで営業したい」——そう考えたとき、必ず関わってくるのが「深夜営業の届出」です。
しかし実際に調べ始めると、「自分の業態は届出が必要なのか?」「いつまでに何を出せばいいのか?」「警察署に行くって本当?」と、わからないことが次々と出てきます。
この記事では、広島県内で深夜営業を始める方に向けて、届出が必要なケース、手続きの流れ、必要な期間、注意点を、行政書士の視点から整理してお伝えします。
午前0時を超えて酒類を提供する飲食店を営む場合、原則として広島県公安委員会への「深夜における酒類提供飲食店営業開始届出書」の提出が必要です。手数料は無料、提出期限は営業開始の10日前までとなっています。
1. 「深夜営業」とは何か?まずは定義を整理
「深夜営業」と一言でいっても、法律上の意味は明確に定まっています。
「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)」において、午前0時から午前6時までの時間帯に酒類を提供する飲食店営業が「深夜における酒類提供飲食店営業(通称:深夜営業)」として定義されています。
つまり、ポイントは2つです。
- 時間:午前0時〜午前6時の間に営業しているか
- 業態:酒類を提供する飲食店であるか
この両方を満たす場合に、届出が必要になります。
居酒屋やラーメン店も対象?
「居酒屋やラーメン店も?」と疑問に思う方も多いですが、答えはケースバイケースです。
| 業態 | 営業時間 | 届出 |
|---|---|---|
| バー | 19:00〜翌2:00 | 必要 |
| 居酒屋 | 17:00〜翌1:00 | 必要 |
| 居酒屋 | 17:00〜23:30 | 不要(24時前に閉店) |
| ラーメン店 | 18:00〜翌3:00(酒類提供あり) | 必要 |
| ラーメン店 | 18:00〜翌3:00(酒類提供なし) | 不要 |
| カフェ | 8:00〜22:00 | 不要 |
ご自身の業態が判断つかない場合、お店の中心メニューが「食事」か「酒」かではなく、実際に午前0時以降に酒類を提供するかどうかで判断してください。
2. 深夜営業届出が必要な業態の具体例
実務で多い業態を整理すると、以下のようなお店が届出の対象です。
届出が必要な代表業態
- バー、ショットバー、ダーツバー、スポーツバー
- スナック(深夜まで営業する場合)
- 深夜営業の居酒屋(ガールズバー的でない、通常の居酒屋)
- 立ち飲み屋
- 深夜まで営業する焼肉店・焼鳥店
- 深夜のラーメン店(酒類を提供する場合)
届出ではなく「風俗営業許可」が必要な業態
似て非なる手続きとして、風俗営業許可(風営法)があります。こちらは届出ではなく許可制で、より厳格な審査があります。
| 業態 | 必要な手続き |
|---|---|
| キャバクラ・クラブ | 風俗営業許可(1号営業) |
| ホストクラブ | 風俗営業許可(1号営業) |
| ガールズバー(接待あり) | 風俗営業許可(1号営業) |
| ガールズバー(接待なし) | 深夜営業届出 |
| バー(接待なし) | 深夜営業届出 |
ガールズバーは「接待にあたる行為」があるかないかで手続きが変わります。お客様の隣に座って継続的にお酌をする・話を合わせる行為は「接待」に該当する可能性が高く、その場合は深夜営業届出ではなく風俗営業許可が必要です。判断に迷う場合は専門家にご相談ください。
3. 広島で深夜営業届出を出すまでの流れ
実際に深夜営業届出を提出するまでのステップを、時系列で整理します。
ステップ1:物件の選定(営業開始の2ヶ月前まで)
物件を契約する前に、その場所が深夜営業ができるエリアかを確認する必要があります。
広島市内では、以下の用途地域では営業できません。
- 第一種住居地域
- 第二種住居地域
- 準住居地域(一部例外あり)
中区の流川町・薬研堀、東区の段原、南区の宇品など、繁華街として認知されているエリアは基本的にOKですが、住宅地寄りの物件は要注意です。
物件契約後に「営業できないエリアでした」では取り返しがつかないため、契約前の確認が必須です。
ステップ2:必要書類の準備(営業開始の1ヶ月前まで)
深夜営業届出には、以下の書類が必要です。
個人で開業する場合:
- 営業開始届出書(広島県警の所定様式)
- 営業の方法を記載した書類
- 営業所の平面図(求積図含む)
- 営業所の周辺地図
- 住民票(本籍地記載)
- 飲食店営業許可証の写し(保健所許可)
- メニュー表
法人の場合は追加で:
- 法人の登記事項証明書
- 定款の写し
- 役員全員の住民票
ステップ3:警察署への提出(営業開始の10日前まで)
書類が揃ったら、営業所を管轄する警察署の生活安全課に提出します。
広島市内の管轄は次の通りです。
| エリア | 管轄警察署 |
|---|---|
| 中区(流川町・薬研堀含む) | 広島中央警察署 |
| 東区 | 広島東警察署 |
| 南区 | 広島南警察署 |
| 西区 | 広島西警察署 |
| 安佐南区・安佐北区 | 広島北警察署 |
提出後、警察署で書類のチェックが行われます。形式上の不備がなければその日のうちに受理されます。
ステップ4:営業開始
届出は「許可」ではなく「届出」なので、書類を提出して受理された日から営業を開始できます。風俗営業許可と違って審査期間がないのが特徴です。
ただし、法律上は「営業開始の10日前まで」に届出をすることになっているため、ぎりぎりの提出は避けましょう。
4. 届出の費用と期間の目安
費用
深夜営業届出には手数料はかかりません(無料)。ただし、行政書士に依頼する場合は別途報酬が必要です。
| 項目 | 費用 |
|---|---|
| 警察署への手数料 | 0円 |
| 住民票・登記簿などの取得実費 | 数千円程度 |
| 行政書士報酬(依頼する場合) | 6万円〜15万円程度 |
行政書士に依頼するメリットは、図面作成・必要書類の収集・警察署対応をすべて任せられることです。本業で忙しい開業準備期に、書類作成で何日も潰さずに済みます。
期間
| ステップ | 期間 |
|---|---|
| 物件決定〜書類準備完了 | 1〜2週間 |
| 図面作成 | 3〜7日 |
| 警察署提出〜受理 | 即日〜数日 |
| 合計(標準) | 約2週間 |
書類が揃っていればスムーズですが、図面の不備で差し戻しになるケースが最も多いので、ここはしっかり準備しましょう。
5. 元広島県警察官の視点:警察が「ここを見る」ポイント
私(西岡)は元広島県警察官として13年間勤務した経歴があります。その経験から、警察署の生活安全課が深夜営業届出を受理する際に実際にチェックしているポイントをお伝えします。
チェックポイント1:図面の正確性
警察官が最初に見るのは営業所の平面図です。実際の店内構造と一致しているか、客室の面積は正確に求積されているか、調理場との区分が明確かを細かく確認します。
「だいたいこんな感じ」で書かれた図面はほぼ間違いなく差し戻されます。メジャーで採寸して、㎡単位まで正確に書くのが鉄則です。
チェックポイント2:見通しを妨げる構造物
風営法の規定で、客席と客席の間に高さ1m以上の見通しを妨げる仕切りがあってはいけないという基準があります。
「個室バー」「半個室」のような形態は、この基準に抵触しやすいため、現地確認の対象になります。図面上は問題なくても、実際に立入った時にカーテンや背の高い椅子で仕切られていると指導が入ります。
チェックポイント3:営業の方法の記載内容
「営業の方法」を記載した書類には、実際の営業内容が正直に書かれているかが重要です。
「酒類提供のみ」と書きながら実際は接客サービスをしているような店は、後日の立入検査で発覚します。届出と実態が違う=虚偽記載として、最悪の場合は営業停止処分の対象になります。
これは元警察官として何度も見てきたパターンですが、「正直に届出する」のが結果的に一番の近道です。
6. よくある質問
7. まとめ
深夜営業を始めるにあたっての要点を整理します。
- 午前0時〜午前6時に酒類を提供する飲食店は、深夜営業届出が必要
- 届出は営業開始の10日前までに管轄警察署へ
- 手数料は無料、行政書士に依頼する場合は6万円〜15万円程度
- 図面作成が最大のハードル。実態と一致した正確な図面を
- 接待行為がある場合は風俗営業許可(許可制)となり、別途必要
「自分のお店は届出が必要か」「いつから準備すればいいか」など、判断に迷う点があれば、まずは無料相談をご利用ください。