「キャバクラを開業したい」「ゲームセンターを始めたい」「ホストクラブの経営に興味がある」——こうした業態を考えたとき、必ず関わってくるのが「風営法(ふうえいほう)」です。
しかし、いざ調べ始めると「1号営業」「2号営業」など聞き慣れない用語が次々と出てきて、「結局、自分のお店はどれに該当するのか?」と混乱される方が多いと思います。
この記事では、広島で風営法に関わる事業を始める方に向けて、風営法とは何か、4種類ある営業許可の違い、自分の業態がどれに該当するかの判断ポイントを、行政書士の視点から整理してお伝えします。
風営法の許可は、お客様への「接待」「遊技」「鑑賞」の有無と内容によって1号〜4号の4種類に分かれます。広島県内では公安委員会(管轄警察署)への許可申請が必要で、許可取得まで約2ヶ月かかります。
1. 風営法とは?まずは法律の目的を整理
風営法の正式名称は「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」です。1948年に制定された比較的古い法律で、2016年に大きな改正が行われました。
風営法の目的
風営法の第一条には、この法律の目的が次のように示されています。
善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止する
平たく言えば、「夜のお店」が健全に運営されるためのルールを定め、お客様や従業員、近隣住民の安全を守るための法律ということです。
風営法の規制対象は「許可」と「届出」の2種類
風営法の規制対象には、大きく分けて2つのカテゴリがあります。
| 区分 | 内容 | 手続きの厳しさ |
|---|---|---|
| 風俗営業(許可制) | 接待・遊技・鑑賞などを伴う営業 | 厳格な審査あり |
| 深夜における酒類提供飲食店営業(届出制) | 午前0時以降に酒類を提供する飲食店 | 届出のみ |
本記事で解説するのは、上の「風俗営業(許可制)」のほうです。深夜営業届出(届出制)については、別記事「広島で深夜営業を始めるには?届出が必要な業態と手続きの全体像」をご覧ください。
「許可」と「届出」の違いは大きく、許可制は厳格な審査をクリアしないと営業できません。一方で届出制は形式不備がなければ受理されます。自分の業態がどちらに該当するかを、まず正確に把握することが重要です。
2. 風営法「4種類の営業許可」の全体像
風営法上の風俗営業は、業態によって1号から4号まで4種類に分かれています。
4種類の営業許可一覧
| 区分 | 通称 | 代表業態 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| 1号営業 | 接待飲食等営業 | キャバクラ・ホストクラブ・スナック(接待あり) | お客様への接待行為がある |
| 2号営業 | 低照度飲食店 | ムードバー・カップル喫茶など | 客席の照度が10ルクス以下 |
| 3号営業 | 区画席飲食店 | 区切り型の飲食店 | 客席の見通しを妨げる構造 |
| 4号営業 | 遊技場営業 | パチンコ・ゲームセンター・麻雀店 | 遊技用設備の設置 |
それぞれの号に該当する業態は、一見シンプルに見えても、実務では「自分の店はどの号に当たるか」の判断が難しいケースが多くあります。順番に詳しく見ていきましょう。
補足:かつての「5号営業」は廃止されました
2016年6月の風営法改正で、ダンスホール等を対象としていた旧5号営業は廃止されました。現在の風営法では1号〜4号の4種類のみで、ダンスを伴う営業は条件によって1号営業や深夜営業届出に分類されるか、または規制対象外となります。「5号営業」と書かれている古いウェブサイトを見かけることがありますが、2026年現在は存在しないカテゴリーですので、ご注意ください。
3. 1号営業:接待飲食等営業(最も該当ケースが多い)
風俗営業の中で最も該当ケースが多いのが、この1号営業です。広島の繁華街・流川町や薬研堀で営業する多くのお店がこのカテゴリーに含まれます。
1号営業の代表業態
- キャバクラ
- ホストクラブ
- クラブ・ラウンジ
- スナック(接待行為がある場合)
- ガールズバー(接待行為がある場合)
「接待」の定義
1号営業に該当するかどうかは、「接待行為があるか」が判断基準になります。風営法上の「接待」とは、警察庁の解釈通達によると次のような行為とされています。
- 特定の客の隣に座って継続的に会話を行う
- お客様にお酌をする
- お客様と一緒に飲食する
- お客様と一緒にカラオケを歌う
- お客様の体に触れる(手を握る、肩を組むなど)
これらの行為を「対価を得て」継続的に行う場合、接待行為とみなされ、1号営業の許可が必要になります。
「接待なし」のはずが「接待あり」と判断されるケース
実務で問題になるのは、「うちは接待していない」と思っているお店が、警察の判断では「接待あり」とされるケースです。
| お店の認識 | 警察側の判断 |
|---|---|
| お客様と少し話すだけ | 継続的な会話は接待 |
| お酌は頼まれたときだけ | 対価を得ているなら接待 |
| カラオケは盛り上げで一緒に歌うだけ | 一緒に歌う行為は接待 |
「他のガールズバーもやっているから大丈夫」「お客様を楽しませているだけ」という認識で営業していると、立入検査で指摘を受けるリスクがあります。
実際に依頼を受けたお店の例を言いますと、コンカフェとして深夜営業届をだして深夜まで営業していたお店が、軌道に乗って内装工事を行った際に経営方針を改めて風営法許可に切り替えるということもありますね。
4. 2号営業:低照度飲食店
2号営業は、客席の照度が10ルクス以下の暗い飲食店が対象です。10ルクスというのは、新聞の文字を読むのが難しい程度の暗さです。
2号営業の代表業態
- ムードバー
- カップル喫茶
- 暗めの照明を売りにしたショットバー(要件次第)
判断のポイント
2号営業に該当するかどうかは、客席の照度を実測して判定します。警察の立入検査では照度計で計測されることもあります。
「雰囲気を出すために少し暗くしている」程度のお店は2号営業には該当しませんが、「カップルがプライベートな時間を過ごす」ことを売りにしているような業態は該当する可能性が高くなります。
開業時に判断に迷う場合は、内装工事の段階で照明設計について専門家に相談するのが安全です。
5. 3号営業:区画席飲食店
3号営業は、客席が区画されていて見通しを妨げる構造の飲食店が対象です。
3号営業の代表業態
- 個室バー
- 半個室型の飲食店(区画が一定基準を超える場合)
- 一部のシガーバー・観覧型店舗
判断のポイント
3号営業の判定基準は次の通りです。
| 客席の構造 | 該当区分 |
|---|---|
| 完全にオープンな客席 | 通常の飲食店 |
| 高さ1m未満の仕切り | 通常の飲食店 |
| 高さ1m以上の仕切り(5㎡未満) | 通常の飲食店扱いの場合あり |
| 高さ1m以上の仕切り(5㎡以上) | 3号営業の可能性 |
| 完全個室の構造 | 3号営業 |
要するに、客席が「外から見えにくい構造」になっている場合に3号営業に該当します。「半個室バー」「個室レストラン」のような業態を考えている方は、開業前の構造設計の段階で要確認です。
6. 4号営業:遊技場営業
4号営業は、遊技用設備を設置した遊技場が対象です。
4号営業の代表業態
- パチンコ店・パチスロ店
- ゲームセンター(一部の業態)
- 麻雀店
- ビリヤード場(ゲーム性のある場合)
判断のポイント
4号営業に該当するかどうかは、設置されている設備の種類で判断されます。
| 設備の種類 | 該当区分 |
|---|---|
| パチンコ・パチスロ機 | 4号営業 |
| 業務用ゲーム機(一部) | 4号営業 |
| 卓球・ボウリング | 4号営業に該当しない |
| 純粋なビリヤード(賭博性なし) | 該当しない場合あり |
ゲームセンターの場合、設置されているゲーム機の種類や賞品の有無によって、4号営業に該当するかどうかが分かれます。新規開業を検討中の方は、設備選定の段階から確認が必要です。
7. 元広島県警察官の視点:「自分はどの号?」を見極めるポイント
僕は元広島県警察官として13年間勤務し、繁華街で営業するお店を現場で数多く見てきました。その経験から、「自分の店がどの号に該当するか分からない」という方に向けて、判断のポイントをお伝えします。
ポイント1:業態名ではなく「実態」で判断される
「うちは普通のバーだから風営法は関係ない」と思っているお店が、実際は1号営業に該当することがあります。判断基準は「お店の名前」ではなく「実際に行われている営業形態」です。
- 「バー」という看板でも、女性スタッフが客の隣で長時間話すなら → 1号営業の可能性
- 「居酒屋」という看板でも、暗い照明で席が区切られているなら → 2号・3号営業の可能性
ポイント2:「接待していないつもり」が一番危ない
これは現場で何度も見てきたパターンです。経営者の方は「うちは接待していない」と本気で思っていても、警察側から見ると明らかに接待行為があるケースがあります。
「お客様にお酒を注ぐのは接客の一環でしょう?」と言われる方が多いのですが、対価をもらってお酌をする行為は風営法上の接待です。「サービスのつもり」と「接待行為」の境界線は、思っている以上に曖昧で、判断は警察側が行います。
警察官時代、現場臨場した際にその店舗が深夜営業届を出しているが、実態は風営法の接待行為を行っているという店舗はかなり多数ありました。
深夜営業届は、落ち着いたバーをイメージしてください。女の子がデュエットなどするのも接待になります。
お酒の進んだお客さんが求めたとしても、接待行為はお店の責任となってしまいますから注意が必要です。
ポイント3:一度該当判定された業態は、変更が難しい
警察に「この営業形態は1号営業に該当する」と判定されると、後から「2号営業に変えたい」というのは現実的に難しくなります。1号営業の許可を取り直すか、営業形態そのものを抜本的に変えるかの選択になり、相当な時間と費用がかかります。
だからこそ、開業前の段階で「自分の業態がどの号に該当するか」を専門家としっかり確認しておくことが、最終的に費用を抑える近道なのです。
8. 風営法許可の申請から取得までの流れ
風営法許可は届出制ではなく許可制なので、深夜営業届出と比べて手続きが厳格で時間もかかります。
主な流れ
| ステップ | 期間の目安 |
|---|---|
| 物件選定・用途地域確認 | 開業3〜4ヶ月前 |
| 必要書類の収集 | 開業2〜3ヶ月前 |
| 図面作成・営業所構造の検討 | 開業2ヶ月前 |
| 警察署への申請書提出 | 開業1.5〜2ヶ月前 |
| 警察による現地確認 | 申請後3〜4週間 |
| 許可証交付 | 申請後約55日 |
費用の目安
| 項目 | 費用 |
|---|---|
| 警察署への手数料 | 24,000円 |
| 住民票・登記簿などの取得実費 | 数千円程度 |
| 行政書士報酬(依頼する場合) | 15万円〜30万円程度 |
深夜営業届出(手数料0円・行政書士報酬6〜15万円)と比べて、風営法許可は手続きの厳格さと費用の両面でハードルが高くなります。
9. よくある質問
10. まとめ
広島の風営法許可について、ポイントを整理します。
- 風営法の風俗営業は1号〜4号の4種類(旧5号は2016年に廃止)
- 1号営業(接待飲食等営業)が最も該当ケースが多い
- 「接待していないつもり」が立入検査で1号営業と判定されるリスクがある
- 許可取得まで約2ヶ月、手数料24,000円、行政書士報酬は15万円〜30万円程度
- 自分の業態がどの号に該当するかは、開業前の段階で必ず確認すべき
風営法許可は深夜営業届出よりも難易度の高い手続きです。自分の業態が風営法に該当するかどうか、どの号に該当するかを判断するだけでも、専門知識が必要になります。
「自分の業態が風営法対象か知りたい」「どの号で申請すべきか相談したい」という段階のご相談も歓迎しています。