「キャバクラを開業したい」「ゲームセンターを始めたい」「ホストクラブの経営に興味がある」——こうした業態を考えたとき、必ず関わってくるのが「風営法(ふうえいほう)」です。
いざ調べ始めると「1号営業」「2号営業」など聞き慣れない用語が次々と出てきて、「結局、自分のお店はどれに該当するのか?」と混乱される方が多いと思います。この記事では、広島で風営法に関わる事業を始める方に向けて、風営法とは何か、5種類ある営業許可の違い、自分の業態がどれに該当するかの判断ポイントを、行政書士の視点から整理してお伝えします。
風営法の許可は、お客様への「接待」「遊技」「鑑賞」の有無と内容によって1号〜5号の5種類に分かれます。広島県内では公安委員会(管轄警察署)への許可申請が必要で、許可取得まで約2ヶ月かかります。
1. 風営法とは?まずは法律の目的を整理
風営法の正式名称は「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」です。1948年に制定された比較的古い法律で、2016年に大きな改正が行われました。
風営法の目的
善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止する
平たく言えば、「夜のお店」が健全に運営されるためのルールを定め、お客様や従業員、近隣住民の安全を守るための法律ということです。
風営法の規制対象は「許可」と「届出」の2種類
| 区分 | 内容 | 手続きの厳しさ |
|---|---|---|
| 風俗営業(許可制) | 接待・遊技・鑑賞などを伴う営業 | 厳格な審査あり |
| 深夜における酒類提供飲食店営業(届出制) | 午前0時以降に酒類を提供する飲食店 | 届出のみ |
本記事で解説するのは、上の「風俗営業(許可制)」のほうです。深夜営業届出については、別記事「広島で深夜営業を始めるには?届出が必要な業態と手続きの全体像」をご覧ください。
2. 風営法「5種類の営業許可」の全体像
風営法上の風俗営業は、業態によって1号から5号まで5種類に分かれています。
| 区分 | 通称 | 代表業態 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| 1号接待飲食等営業 | 接待飲食店 | キャバクラ・ホストクラブ・スナック(接待あり) | お客様への接待行為がある |
| 2号低照度飲食店 | ムードバー等 | ムードバー・カップル喫茶など | 客席の照度が10ルクス以下 |
| 3号区画席飲食店 | 個室バー等 | 個室バー・半個室型の飲食店 | 客席の見通しを妨げる構造 |
| 4号遊技場営業(射幸性あり) | パチンコ等 | パチンコ・パチスロ・麻雀店 | 射幸性のある遊技設備の設置 |
| 5号遊技場営業(射幸性なし) | ゲームセンター等 | ゲームセンター・クレーンゲーム | 4号以外の遊技設備の設置 |
2016年6月の風営法改正で廃止されたのは、旧法の「ダンスホール規制(旧5号)」です。現行の風営法では1号〜5号の5種類の営業区分があります。ダンスを伴う営業は、改正後は条件によって1号営業や深夜営業届出に分類されるか、規制対象外となりました。「風営法は4種類のみ」という情報を見かけることがありますが、これは誤りです。
3. 1号営業:接待飲食等営業(最も該当ケースが多い)
風俗営業の中で最も該当ケースが多いのが、この1号営業です。広島の繁華街・流川町や薬研堀で営業する多くのお店がこのカテゴリーに含まれます。
1号営業の代表業態
- キャバクラ
- ホストクラブ
- クラブ・ラウンジ
- スナック(接待行為がある場合)
- ガールズバー(接待行為がある場合)
「接待」の定義
1号営業に該当するかどうかは、「接待行為があるか」が判断基準になります。風営法上の「接待」とは、警察庁の解釈通達によると次のような行為とされています。
- 特定の客の隣に座って継続的に会話を行う
- お客様にお酌をする
- お客様と一緒に飲食する
- お客様と一緒にカラオケを歌う
- お客様の体に触れる(手を握る、肩を組むなど)
これらの行為を「対価を得て」継続的に行う場合、接待行為とみなされ、1号営業の許可が必要になります。
「接待なし」のはずが「接待あり」と判断されるケース
| お店の認識 | 警察側の判断 |
|---|---|
| お客様と少し話すだけ | 継続的な会話は接待 |
| お酌は頼まれたときだけ | 対価を得ているなら接待 |
| カラオケは盛り上げで一緒に歌うだけ | 一緒に歌う行為は接待 |
「他のガールズバーもやっているから大丈夫」「お客様を楽しませているだけ」という認識で営業していると、立入検査で指摘を受けるリスクがあります。
実際に依頼を受けたお店の例を言いますと、コンカフェとして深夜営業届をだして深夜まで営業していたお店が、軌道に乗って内装工事を行った際に経営方針を改めて風営法許可に切り替えるということもありますね。
4. 2号営業:低照度飲食店
2号営業は、客席の照度が10ルクス以下の暗い飲食店が対象です。10ルクスというのは、新聞の文字を読むのが難しい程度の暗さです。
2号営業の代表業態
- ムードバー
- カップル喫茶
- 暗めの照明を売りにしたショットバー(要件次第)
2号営業に該当するかどうかは、客席の照度を実測して判定します。「雰囲気を出すために少し暗くしている」程度のお店は2号営業には該当しませんが、「カップルがプライベートな時間を過ごす」ことを売りにしているような業態は該当する可能性が高くなります。開業時に判断に迷う場合は、内装工事の段階で照明設計について専門家に相談するのが安全です。
5. 3号営業:区画席飲食店
3号営業は、客席が区画されていて見通しを妨げる構造の飲食店が対象です。
3号営業の代表業態
- 個室バー
- 半個室型の飲食店(区画が一定基準を超える場合)
| 客席の構造 | 該当区分 |
|---|---|
| 完全にオープンな客席 | 通常の飲食店 |
| 高さ1m未満の仕切り | 通常の飲食店 |
| 高さ1m以上の仕切り(5㎡未満) | 通常の飲食店扱いの場合あり |
| 高さ1m以上の仕切り(5㎡以上) | 3号営業の可能性 |
| 完全個室の構造 | 3号営業 |
6. 4号営業:遊技場営業(射幸性のある設備)
4号営業は、射幸性のある遊技用設備を設置した遊技場が対象です。
4号営業の代表業態
- パチンコ店・パチスロ店
- 麻雀店
- ビリヤード場(賭博性のある場合)
| 設備の種類 | 該当区分 |
|---|---|
| パチンコ・パチスロ機 | 4号営業 |
| 麻雀卓 | 4号営業 |
| 純粋なビリヤード(賭博性なし) | 該当しない場合あり |
7. 5号営業:遊技場営業(射幸性のない設備)
5号営業は、4号営業に該当する射幸性のある設備以外の遊技用設備を設置する営業です。主にゲームセンターが対象になります。
5号営業の代表業態
- ゲームセンター
- クレーンゲーム・UFOキャッチャー専門店
- ビデオゲームコーナーを持つ施設
| 設備の種類 | 該当区分 |
|---|---|
| クレーンゲーム・ビデオゲーム機(賞品の提供あり) | 5号営業 |
| 業務用ゲーム機(射幸性がないもの) | 5号営業の可能性 |
| 卓球・ボウリング | 4号・5号いずれにも該当しない |
4号と5号の違いは「射幸性があるか否か」です。パチンコ・麻雀は換金性・射幸性が高いため4号、ゲームセンターのように遊技を楽しむことが主体の設備は5号になります。設置するゲーム機の種類によって該当号が変わるため、開業前に必ず確認してください。
8. 元広島県警察官の視点:「自分はどの号?」を見極めるポイント
元広島県警察官として13年間勤務し、繁華街で営業するお店を現場で数多く見てきました。その経験から、「自分の店がどの号に該当するか分からない」という方に向けて、判断のポイントをお伝えします。
業態名ではなく「実態」で判断される——「バー」という看板でも、女性スタッフが客の隣で長時間話すなら1号営業の可能性があります。「居酒屋」という看板でも、暗い照明で席が区切られているなら2号・3号営業の可能性があります。
警察官時代、現場臨場した際にその店舗が深夜営業届を出しているが、実態は風営法の接待行為を行っているという店舗はかなり多数ありました。深夜営業届は、落ち着いたバーをイメージしてください。女の子がデュエットなどするのも接待になります。お酒の進んだお客さんが求めたとしても、接待行為はお店の責任となってしまいますから注意が必要です。
だからこそ、開業前の段階で「自分の業態がどの号に該当するか」を専門家としっかり確認しておくことが、最終的に費用を抑える近道です。
※西岡の警察官時代・行政書士としての経験を踏まえた見解です
9. 風営法許可の申請から取得までの流れ
| ステップ | 期間の目安 |
|---|---|
| 物件選定・用途地域確認 | 開業3〜4ヶ月前 |
| 必要書類の収集 | 開業2〜3ヶ月前 |
| 図面作成・営業所構造の検討 | 開業2ヶ月前 |
| 警察署への申請書提出 | 開業1.5〜2ヶ月前 |
| 警察による現地確認 | 申請後3〜4週間 |
| 許可証交付 | 申請後約55日 |
費用の目安
| 項目 | 費用 |
|---|---|
| 警察署への手数料 | 24,000円 |
| 住民票・登記簿などの取得実費 | 数千円程度 |
| 行政書士報酬(依頼する場合) | 15万円〜30万円程度 |
10. よくある質問
当事務所に実際に寄せられた質問をまとめました。
まとめ
| 号 | 区分 | 代表業態 |
|---|---|---|
| 1号 | 接待飲食等営業 | キャバクラ・ホストクラブ・スナック(接待あり) |
| 2号 | 低照度飲食店 | ムードバー・カップル喫茶 |
| 3号 | 区画席飲食店 | 個室バー・半個室型飲食店 |
| 4号 | 遊技場(射幸性あり) | パチンコ・麻雀店 |
| 5号 | 遊技場(射幸性なし) | ゲームセンター・クレーンゲーム店 |
- 現行の風営法は1号〜5号の5種類(旧法のダンスホール規制は2016年に廃止)
- 1号営業(接待飲食等営業)が最も該当ケースが多い
- 「接待していないつもり」が立入検査で1号営業と判定されるリスクがある
- ゲームセンターは4号ではなく5号営業に該当する
- 許可取得まで約2ヶ月、手数料24,000円