風俗営業許可の申請で、「書類も場所も問題ないのに許可が下りなかった」という事態が起きる原因の一つが、構造設備基準の不適合です。

照度・見通し・区画の高さ・出入口の向き——これらの数値基準は、警察が現地確認で必ずチェックします。図面に記載した数値が基準を満たしていても、実際の店舗と一致していなければ許可はおりません。

この記事のポイント

風俗営業許可の構造設備基準は4つの柱で構成されます。①照度:客室内5ルクス以上を確保できる照明設備、②見通し:客室内に見通しを妨げる構造物がないこと、③区画:仕切りを設ける場合は高さ1m以下、④出入口:客の出入口が道路に面していること。図面には実測値で記載し、警察の現地確認で実態と一致していることが許可の条件です。

構造設備基準は「図面の数値が正確で、現地の実態と一致しているか」がすべてです。内装工事前の段階で基準を確認し、「許可が取れる設計」で工事に入ることが最短経路です。

1. 構造設備基準とは何か

風俗営業許可の申請において、申請者の人的要件(欠格事由)・場所的要件(用途地域・距離制限)と並ぶ第3の柱が「構造設備要件」です。根拠法令は風営法第33条および広島県の施行条例です。

構造設備基準が設けられている趣旨は、「店舗の物理的な設計によって一定の透明性を担保する」というものです。「見通しを妨げてはならない」「照度を確保しなければならない」という基準は、客室内で外から確認できない行為が行われにくくするための仕組みです。

2. 主な構造設備基準(数値一覧)

1号営業(キャバクラ・ホストクラブ・スナック等)に適用される主な構造設備基準です。

項目基準図面への記載
客室の照度5ルクス以上を保てる照明設備照明の種類・位置・出力(ルクス値)
見通しを妨げる構造設置してはならない平面図で構造物がないことを示す
客室区画の高さ仕切りを設ける場合は1m以下断面図または高さ寸法の明記
客室の出入口道路に面していること周辺地図・平面図での位置明示

① 照度:5ルクス以上

照度基準
客室内 5ルクス以上

5ルクスは、よく「ろうそくの明かりくらい」と例えられる明るさです。それほど暗い状態でも確保しなければならない最低ラインです。

  • 図面への記載:照明設備の位置・種類・出力(W数)を平面図に記載。ただし図面だけでは実際の照度はわかりません。実際に5ルクスを確保できる設備の設置が前提です。
  • よくある問題:「図面には5ルクス以上と記載したが、実際の照度は4ルクス未満だった」→ 現地確認で発覚し、照明設備の改修を求められます。
  • 確認方法:照度計(ルクスメーター)でテーブル面の照度を実測。内装工事完了後・開業前に必ず確認してください。
当事務所の実務:警察官の計測がすべてです
申請代行の際、当事務所も照度計を使って計測しています。重要なのは、申請後の現地調査では警察官が持参した照度計による計測がすべてだという点です。当事務所の計測で10〜15ルクスが出ていても、調査に来た警察官の機器で5ルクス未満と計測されれば改善指導の対象になります。当事務所では計測値が10ルクス前後の場合、念のために照明をもう少し明るくしておくことをお伝えするようにしています。

② 見通し:妨げる構造物の禁止

見通し確保
見通しを妨げる構造物の設置禁止

客室内に見通しを妨げる仕切り・衝立・カーテン等を設置してはなりません。「管理者または従業員が客室内の状況を把握できる」見通しが求められます。

  • OK例:腰の高さ(1m以下)の装飾的な仕切り、低いソファの背もたれ
  • NG例:天井まで届く仕切りで完全に個室化された空間、濃いカーテンで内部が見えない個室

③ 客室区画の高さ:1m以下

区画の高さ制限
仕切りは 1m以下

客室内で仕切りを設ける場合は、高さが1m以下でなければなりません。1mを超えると「見通しが確保できない」と判断されます。

  • 注意点:ソファの背もたれやパーテーションも含まれます。「家具だから構造設備ではない」という解釈は通用しません。
  • よくある問題:内装工事後に搬入したソファの背もたれが110cmあり、現地確認で指摘されたケースがあります。

④ 出入口:道路に面していること

出入口の要件
客の出入口が道路に面していること

客が使用する出入口は、公道(幅員1.8m以上の建築基準法上の道路)に面していることが必要です。

ビルの奥まった場所にある店舗、エレベーターでしかアクセスできない上層階の店舗等は、この基準への適合を事前に確認する必要があります。

3. 図面に記載する具体的な内容

提出が必要な図面の種類

図面の種類必須記載事項
営業所の平面図各室の用途・面積・寸法・出入口の位置・照明設備の位置・仕切りの位置と高さ
求積図客室の面積計算(縦×横の計算式を明記)
音響・照明設備概要書設備の種類・出力・配置
周辺地図(案内図)営業所の位置・最寄り駅・保護対象施設の位置

図面作成の基本ルール

実測値を使う
図面の寸法は、メジャーで実際に測った数値を使います。不動産業者から提供された図面の数値をそのまま転記することは禁物です。不動産図面の数値と実測値はしばしば異なります(柱の厚み・内法寸法か外法寸法かの違いなど)。
縮尺を明示する
平面図には縮尺(例:1/100)を必ず明記します。縮尺なしの図面は受理されません。
用途を全室分記載する
客室だけでなく、トイレ・更衣室・倉庫など全室の用途と面積を記載します。「何があるかわからない部屋」を作らないことが重要です。
照明設備を位置と出力で記載する
照明設備は「丸印で位置を示す」だけでなく、設備の種類(LEDダウンライト等)と出力(W数または光束・lm)を記載します。各都道府県警察のホームページに記載例が掲載されていますので、それに準じて作成してください。

4. 現地確認で「不合格」になるよくあるパターン

パターン①:図面の数値と実態が一致しない

図面の記載実態(現地確認時)結果
仕切りの高さ:90cmソファ背もたれ:115cm修正指導
照明設備:6ルクス以上実測照度:3.8ルクス照明の増設・変更を指導
客室:1部屋パーテーションで2部屋に分割再申請が必要になるケースも
出入口:正面玄関ビル共用部を通らないと入れない要件の再確認が必要

図面は「現地確認の答え合わせ」として使われます。図面と実態が一致していることが大前提です。

パターン②:不動産業者提供の図面をそのまま使った

申請者の方が不動産業者から「申請用の図面」を受け取ってそのまま提出しようとするケースがあります。実務上、これはほぼ毎回問題になります。

不動産業者から図面をいただいた場合でも、必ず実測で確認し直してください。

パターン③:内装工事後に設備を変更した

申請後に「もう少し照明を暗くしたい」「ボックス席を個室風にしたい」という理由で設備を変更するケースがあります。許可取得前の変更は、必ず申請書類・図面と照合してください。

5. 元警察官の視点:図面審査で「ピンとくる」申請書の特徴

警察の審査担当者は、申請書と図面を見ただけで「この店は現地確認で問題が出そうだな」とある程度感じ取ります。経験を積んだ担当者にとっては、書類上の数値より「書類全体から受ける印象」の方が重要だったりします。

「怪しい」と感じる図面の特徴があります。たとえば、照明設備が最低限の「5ルクス以上」にちょうど設定されている場合、担当者は「実測したら5ルクス未満かもしれない」と思いながら現地確認に向かいます。「5ルクスぴったり」は、余裕がないということですから。

図面から読み取れる情報に違和感を感じる場合もあります。日本の建物にはある程度建築のパターンがありますが、そのパターンで考えたときに「本来はここに壁があるのではないか」と推測することがあります。実際に現地調査をしてみると本当に壁があり、その部分が基準を満たさないために改善するまで許可が下りないというケースが起きます。

逆に「信頼できる」と感じる申請書は、実測値を丁寧に記載し、寸法に矛盾がなく、求積図の計算式が正確なものです。「この申請者(または行政書士)はちゃんと現地を確認して作っている」という印象を与えます。

※西岡の警察官時代・行政書士としての経験を踏まえた見解です

6. 構造設備基準を事前に確認する方法

ステップ①:現地でチェックリストを使う

ステップ②:照度計で実測する

照度計(ルクスメーター)は2,000〜5,000円程度で購入できます。現地でテーブル面を実測することを強くおすすめします。

ステップ③:行政書士に現地確認を依頼する

物件の候補が固まった段階で、行政書士に現地確認を依頼することが最も確実です。「この物件で許可が取れるか、取れるとしたら何を修正する必要があるか」を事前に把握した上で内装工事に入れます。

工事前の現地確認を承ります
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7. よくある質問(FAQ)

当事務所に実際に寄せられた質問をまとめました。

5ルクスの照度は、テーブルの上で測るのですか?

一般的には客が着席するテーブル面(床面から概ね0.8〜1m程度の高さ)での測定が基本となります。ただし、テーブル面だけが明るければよいというわけではありません。客室全体として見通しが確保できる照度が求められるため、照度計での実測確認を強くおすすめします。照明機器のカタログスペックと実際の照度は、反射材・天井高・拡散カバーの有無によって大きく異なります。

ソファの背もたれが高さ105cmありますが、仕切りとして見なされますか?

見なされる可能性が高いです。「仕切り」は固定された構造物に限らず、家具も含まれます。向かい合ったボックスシートを仕切るように置かれたソファの背もたれが高さ1mを超えると、「見通しを妨げる」と判断されるリスクがあります。不安がある場合は事前に確認することをおすすめします。

客室の照度を下げたい場合、調光設備は設置できますか?

調光した状態で5ルクス以上を保てることが条件です。最も暗い状態にしても5ルクスを下回らない照明計画が必要です。調光機能付き照明を導入する場合は、最低照度でのルクス確認が必須です。

なお、スライダックス(電圧調整型の調光器)などが設置された店舗は原則不許可となる都道府県もあります。物件に調光設備が設置されている場合は、その種類と仕様を必ず事前に確認してください。

客室が複数ある場合、それぞれに照度・見通し基準が適用されますか?

はい、客室ごとに適用されます。複数の客室がある場合は、それぞれの照度・見通し・区画高さを確認する必要があります。図面では客室ごとに番号を振り、各基準への適合状況を明示することが審査の円滑化につながります。

申請後に照明設備を交換したいのですが、届出は必要ですか?

交換によって設備の内容が変わる場合(出力・種類・位置の変更)は、変更届の提出が必要となることがあります。「同等品への交換」の場合は届出不要のケースもありますが、判断が難しいため管轄警察署または行政書士に確認してください。

まとめ:構造設備基準は「数値の実態一致」がすべて

基準数値・条件確認方法
照度客室内 5ルクス以上を保てる照明照度計で実測
見通し妨げる構造物を設置しない現地確認
区画の高さ仕切りは1m以下メジャーで実測
出入口道路に面していること周辺地図・現地確認

「図面を整えれば大丈夫」ではなく、「実態が基準を満たしていて、それが図面に正確に反映されている」状態を作ることが目標です。相談は工事前が鉄則です。工事後の修正は費用がかかります。内装工事前の段階でご相談いただければ、「この設計で許可が取れるか」を事前に確認した上で工事に入ることができます。