西岡行政書士事務所
EX-POLICE GYOSEISHOSHI
風営法INTERVIEW

【元警察官が語る】
風営法の立入検査で見られるポイント

2026.06.11 語り手:西岡 祐也(元広島県警察官13年/行政書士)
西岡 祐也(にしおか ゆうや)
元広島県警察官として13年勤務後、行政書士に。立入検査を行う側だった経験を活かし、風営法・深夜営業・古物商など警察申請と開業後の運用を専門にサポートしている。
この記事のポイント

「警察の立入りが来たとしたら、大丈夫でしょうか」——行政書士になってから、こういうご相談を何度もいただきます。皆さん一様に、不安そうな声です。私は元広島県警察官として、立入る側にいた人間です。だからこそ言えるのは、立入検査は、きちんと営業している店にとっては怖いものではないということ。警察が何を見に来ているのかを知っていれば、当日慌てることも、日頃の備えを間違えることもありません。今回は、立入る側だった経験から、「立入検査で何を見ているのか」「どう備えておけばいいのか」をお話しします。

そもそも立入検査とは何か — 拒否はできません

まず前提から。警察の立入検査は、風営法37条にもとづくものです。対象は風俗営業のお店(キャバクラ・スナックなど)だけではありません。深夜営業届で営業しているバーや、深夜に営業している飲食店も対象です。「うちは届出だけの店だから関係ない」ということはないんです。

一度、「職務質問みたいに拒否できるんですか?」と聞かれたことがありましたが、拒否はできません。正当な理由なく立入りを拒むと、それ自体が100万円以下の罰金の対象になります。実際、立入りを拒み続けて逮捕された店の事例もあります。やましいことがなくても、拒んだ時点で「何か隠しているのでは」と見られてしまう。応じるのが唯一の正解です。

一方で、警察側にもルールがあります。立入る警察官は身分を示す証明書を携帯し、提示する義務があります。そして、この立入りの権限は犯罪捜査のために使ってはならないと法律に明記されています。あくまで、風営法が守られているかを確認するための調査です。

立入検査で「必ず」見られるもの — 従業者名簿

では、立入りで警察は何を見るのか。まず間違いなく確認されるのが、従業者名簿です。従業者名簿は、風営法36条で営業所ごとに備え付けが義務づけられている書類です。ポイントは3つあります。

なぜ生年月日まで書かせるのか。18歳未満を働かせていないかを確認するためです。年少者の使用は、風営法の中でも特に厳しく見られるところです。名簿の不備は100万円以下の罰金や営業停止につながる、軽くない違反です。

現場の話 元広島県警察官・西岡より

立入る側にいた頃、名簿を求めるときはいつも、「ないかもなぁ」と考えながら声をかけていました。というのも、体感ですが、4〜5割くらいのお店が、名簿を全く作っていなかったからです。それくらい、備え付けられていないのが実情でした。だからこそ、必ず作成しておいてください。それだけで、立入りの印象は大きく変わります。

それから、もう一つ知っておいてほしいことがあります。立入調査が入るきっかけは、大体の場合、出入り禁止にされたお客さんなどの、逆恨みからの通報なんです。出入り禁止にされる人には、もちろんその人自身に原因があるのでしょう。

でも——普段からルールを破って営業していると、こういうときに困るのは自分なんです。通報された内容が事実なら、言い逃れはできません。日頃の営業こそが、いちばんの守りだということです。

定番の確認ポイントはこの5つ

従業者名簿のほかに、立入りでよく確認されるのは次の点です。

1
照明 — 暗くして営業していないか
営業所の照度が基準を満たしているか、そして明るさを暗くして営業していないか。申請・届出のときは無かったのに、営業を始めてから「雰囲気づくり」で調光器を後付けする店があるため、ここは定番のチェックポイントです。
2
構造 — 申請時から勝手に変えていないか
間仕切りを増やした、ソファを背の高いものに替えた、個室的な区画を作った——申請・届出時の図面と現状が違えば、無承認変更です。「内装を少し変えただけ」のつもりが、見通しを妨げる変更なら基準違反になります。
3
接待の実態 — 届出の店が接待をしていないか立入原因 第2位
深夜営業届だけの店(ガールズバー等)が、隣に座って談笑する・一緒に歌うといった「接待」をしていないか。店内の様子や従業者名簿の「業務の内容」欄からも見られます。届出の店の接待は、風俗営業の無許可営業です。
立入りの原因としては、これが2番目に多いですね。大体はお客さんからの情報提供で立入ることが多いのですが、その通報の中身がコレ、ということです。
4
営業時間 — 許可の店が深夜0時を超えていないか立入原因 第1位
風俗営業(許可)の店は原則深夜0時まで(地域により1時まで)。時間を超えて営業していないかは、立入りの定番です。
立入調査のいちばんの原因がこれです。営業時間は看板などに書いてあるので、風営法に全く詳しくないお客さんでも、超過は見れば分かってしまう。出入り禁止にされて逆恨みしたお客さんが、警察に通報する——そういう流れが実際に多いのです。
5
18歳未満 — 従業員にも、客にも
年少者を働かせていないか、深夜に18歳未満の客を入れていないか。従業者名簿の生年月日と、その場にいる従業員の照合が行われることもあります。

立入りが来たら、どう対応するか

当日の対応は、シンプルにこれだけです。

  1. 身分証明書の提示を確認する
  2. 求められた資料(従業者名簿など)を素直に出す
  3. 指摘されたことをメモする(後で正確に対応するため)
  4. 不明点や不安があれば、その場で争わず、後から専門家に相談する(すぐに直せることなら、専門家に相談するまでもありません。指摘の意味が分からないときや、対応に迷うときにご相談ください)

指摘を受けた場合も、感情的に反論するのは得策ではありません。是正を求められたら速やかに直し、必要なら変更届などの手続きを取る。それが結果的にいちばん早く、傷を浅くします。

最後に — 立入りは「日頃の営業」を映す鏡です

立入検査で慌てる店と、堂々と応じられる店。その違いは、当日の対応力ではなく、日頃の営業がそのまま出ているだけです。

従業者名簿を最新にしておく。申請時の図面と違う変更をしない。調光器を付けない。接待の線を越えない。18歳未満を入れない。——どれも、開業のときに整えた状態を維持するだけのことです。そして、変更の必要が出てきたのなら、変更届を出しておけば大丈夫です。

「うちの名簿、この書き方で大丈夫かな」「この内装変更、届出が要るのかな」と少しでも不安があれば、立入りが来る前に確認しておきましょう。広島で夜のお店を営んでいる方、これから開業する方、お気軽にご相談ください。

よくある質問

Q警察の立入検査は拒否できますか?
Aできません。風営法37条にもとづく立入りを正当な理由なく拒むと、100万円以下の罰金の対象になり、拒否を続けて逮捕された事例もあります。一方で、警察官には身分を示す証明書の提示義務があり、立入りの権限は犯罪捜査のために使うことはできないと法律に明記されています。落ち着いて応じるのが唯一の正解です。
Q立入検査では、何を確認されますか?
Aまず従業者名簿は必ず確認されると考えてください。そのほか、照明(暗くして営業していないか・照度)、営業所の構造が申請時から変わっていないか、深夜営業届の店が接待をしていないか、営業時間、18歳未満の従業員や客がいないか、が定番の確認ポイントです。
Q従業者名簿は誰の分まで必要ですか?
A営業所で働く全員です。正社員・アルバイトだけでなく、業務委託のキャスト、派遣スタッフ、1日だけの体験入店も対象になります。住所・氏名・性別・生年月日・採用年月日・退職年月日・従事する業務の内容を記載し、求められたら直ちに提示できる状態で営業所に備え付けます。不備は100万円以下の罰金や営業停止の対象です。
「いつ来ても大丈夫」な状態を、
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