「図面を持って行ったら差し戻された」「どこが悪いのかわからない」「もう一回作り直すのが面倒」——深夜営業届出の準備でよく起きるトラブルが、図面の差し戻しです。

図面の不備は、書類の中でも特に多い差し戻し理由です。申請書の記載誤りは窓口でその場で修正できることもありますが、図面の不備は作り直しが必要になる場合がほとんどです。

この記事のポイント

深夜営業届出の図面が差し戻される主な理由:①縮尺の未記載・不正確、②求積図の面積計算式の記載なし、③不動産業者の図面の流用、④用途欄の記載漏れ、⑤図面と申請書の数値の不一致。差し戻しが発生すると受理日がずれ、深夜営業開始日が遅れます(受理日から10日後が開始可能日)。

1. 深夜営業届出に必要な図面の種類(おさらい)

図面の種類主な記載内容差し戻しの多さ
平面図店舗内の間取り・各室の用途・寸法・出入口・照明・音響設備の位置★★★ 最多
求積図客室の面積計算(縦×横の計算式)★★★ 同率最多
周辺地図(案内図)店舗の位置・最寄り駅・周辺の道路★ 比較的少ない

平面図は求められる情報量が多く、見た目がごちゃごちゃになりやすいのも差し戻しが多い理由の一つです。求積図については、面積を求めた計算式の記載まで必要なことが警察署のHPに明示されていないケースが多く、知らずに提出してしまいがちです。周辺地図は地図アプリの印刷に少し手を加える形でよいとされているため、比較的簡単です。

2. 差し戻しパターン①:縮尺が記載されていない・不正確

パターン ①
縮尺の未記載・不一致

平面図には縮尺(例:1/100)を必ず記載する必要があります。縮尺の記載がない図面はそもそも受理されません。また、縮尺を記載していても実際の図面サイズと一致していない場合も差し戻しになります。

NGの例:

  • 縮尺の記載なし
  • 縮尺と実際の図面サイズが一致していない
  • 「だいたい1/100」など曖昧な表現

3. 差し戻しパターン②:求積図の面積計算が合わない

パターン ②
求積図の計算式なし・計算誤り

求積図は「客室の面積がいくらか」を計算で示す図面です。「□□㎡」と面積を書くだけでは不十分で、面積の計算式(縦×横)を図面上に明示する必要があります。スペースが足りない場合は、別紙に計算式を記載する形でも対応できます。

問題のパターン具体例
計算式の記載なし「面積:20.5㎡」だけで計算式がない
計算式と面積の不一致「3.0m × 6.5m = 19.5㎡」と書いてあるのに数値が合わない
外法で計算している壁の厚みを含めた外寸で計算している
単位の混在㎡と坪が混在している
内法(うちのり)で計算してください
面積計算は壁の内側から内側の距離(内法)で行います。柱や壁の厚みは面積に含めません。なお、壁の厚さ・防音材の厚さも申請書に記載が必要なため、いずれにしても実測が必要です。

L字型・複雑な形状の部屋の計算方法

客室がL字型・多角形の場合は、長方形に分割してそれぞれの面積を足し合わせる方法で計算します。

図解:L字型の客室面積の求め方
エリアA 3.0m × 4.0m = 12.0㎡ 3.0m 4.0m エリアB 2.0m × 2.5m = 5.0㎡ 計算式 A: 12.0㎡ B: 5.0㎡ 合計 17.0㎡
エリアA:3.0m × 4.0m = 12.0㎡
エリアB:2.0m × 2.5m = 5.0㎡
合計:12.0 + 5.0 = 17.0㎡

4. 差し戻しパターン③:不動産業者の図面をそのまま使った

パターン ③
不動産業者の図面の流用

不動産業者が作成する図面は物件の説明用として作られており、警察への届出に必要な情報が含まれていないことがほとんどです。

中には「この図面で申請できます」と説明を受けてお持ちいただく方がいらっしゃいますが、確認すると計算式も照明の位置も記載されていないことがあります。最もひどいケースでは、部屋が省略して記載されている図面もありました。いただいた図面をそのまま使用することはおすすめしていません。

問題内容
寸法が外法(そとのり)で記載されている壁の外側から外側の寸法のため、実際の客室より広く見える
用途(室名)の記載がない「客室」「厨房」「トイレ」等の記載がなく、どの部屋が何かわからない
求積図がない不動産図面には求積図が付属していないことがほとんど
縮尺の記載がない・合わない物件説明用の図面は縮尺を省略していることがある
設備(照明・音響)の記載がない深夜営業届では照明・音響設備の概略が必要

5. 差し戻しパターン④:用途欄の記載が不十分

パターン ④
全室の用途が記載されていない

平面図では店舗内のすべての室に用途を記載する必要があります。用途が記載されていない部屋があると、審査担当者が「ここも客室なのではないか」と判断できません。客室面積の算定に影響するため、すべての室の用途を明確に記載することが重要です。

  • 客室と厨房だけ書いて、トイレや更衣室の記載がない
  • 「その他」という曖昧な用途になっている(全室を「その他」にすると審査に通りません。具体的な用途の記載が無難です)
  • 未使用スペースが記載されておらず、現地確認で発覚する

6. 差し戻しパターン⑤:図面と申請書・他書類の数値が一致しない

パターン ⑤
書類間の数値の不一致
チェック項目確認内容
客室面積求積図の合計面積 = 申請書に記載した客室面積
営業所の所在地図面の住所表示 = 申請書の住所
出入口の位置平面図の出入口 = 周辺地図の出入口の向き
用途図面の用途表記 = 申請する業種との整合性

7. 差し戻しを受けた場合の影響

差し戻しで開業日が遅れます

差し戻しが発生すると受理日がずれます。深夜営業届出は受理日から10日後から深夜営業が可能となりますが、差し戻しで再提出になるとその起算が遅れます。開業日が決まっている場合、差し戻し→修正→再提出のロスタイムが全体スケジュールに影響します。

8. 元警察官の視点:図面の「質」が審査の印象を変える

警察官として審査書類を扱っていた経験から言えば、図面の「丁寧さ」は審査の進み方に影響します。実測値を正確に記載し、縮尺が合っていて、全室の用途が明示されている図面は、「この申請者は現地をちゃんと確認して作っている」という印象を与えます。

逆に、明らかに不動産業者の図面を使い回したもの、縮尺が合っていないもの、見た目が手を抜いたような図面は、審査担当者に「現地確認をしっかり行おう」という意識を持たせます。何かをごまかそうとしたように見えると、現地で確認しなければならなくなります。それが警察の仕事だからです。

※西岡の警察官時代・行政書士としての経験を踏まえた見解です

9. 図面作成の自己チェックリスト

平面図のチェック
求積図のチェック
書類間の整合性チェック

10. よくある質問(FAQ)

当事務所に実際に寄せられた質問をまとめました。

手書きの図面でも受理されますか?
受理されます。「CADソフトで作成しなければならない」という規定はありません。縮尺が正確で、必要事項が明示されていることが条件です。手書きでも丁寧に作成すれば問題ありません。西岡行政書士事務所では、警察官時代の捜査書類の手書き作成経験を活かし、警察組織の書類形式に合わせた手書き図面を作成しています。
不動産業者からもらった図面を使えますか?
そのままではほぼ使えません。不動産業者の図面を「参考資料」として実測を行い、届出用に作り直す必要があります。特に、外法から内法への変換・用途の記載・求積図の追加が必要になることがほとんどです。
狭いシンプルなバーでも図面は必要ですか?
はい、必要です。1部屋だけのカウンターバーでも、平面図・求積図・周辺地図の3種類は必要です。シンプルな店舗であれば作成難易度は低くなりますが、バーなどの物件はオシャレな形状の部屋が多く、面積を求めやすい長方形とは限りません。たとえば五角形のトイレを持つ物件を見たことがあります。変わった形の部屋がある場合は、その壁の寸法も計測が必要なため、予想以上に時間がかかることがあります。
深夜営業届出の図面に有効期限はありますか?
図面自体に有効期限はありません。ただし届出後に内装を変更した場合は変更届の提出が必要になり、その際に変更後の図面を添付します。
図面だけ行政書士に依頼することはできますか?
事務所によります。西岡行政書士事務所では「図面作成のみ」のご依頼も承っています。ただし、申請書に記載する内容と図面の内容が一致している必要があり、図面のみ作成した後の申請書記載についてアドバイスはしますが、実際のところなかなかうまくいかないことが多いのが現実です。書類一式の代行をご依頼いただく方が、全体として確実です。

まとめ:差し戻しを防ぐための3原則

原則内容
① 実測値(内法)で作る不動産業者の図面を流用せず、自分で実測した内法寸法を使う
② 縮尺を正確に記載する縮尺は必ず記載し、図面サイズと一致させる
③ 書類間の数値を一致させる平面図・求積図・申請書の面積・住所等が一致していることを確認する

「自分で作るのは不安」という方は、行政書士への相談をおすすめします。当事務所では、図面作成から届出書類一式の作成・提出代行まで対応しています。