一般建設業と特定建設業の違いは?
5,000万円の基準と財産4要件
建設業許可には一般と特定があります。よくある誤解は「大きい工事を請けるには特定が必要」というもの。これは違います。分かれ目は、請け負う金額ではなく「元請として下請に出す金額」です。
そして基準額は2025年2月1日に引き上げられました。いま検索して出てくる解説のなかには、まだ古い数値のものが混じっています。この記事では、現行の基準、特定で加わる財産4要件、そして7業種だけ実務経験が通用しないという落とし穴までを整理します。
- 分かれ目は元請として1件の工事で下請に出す代金の総額。5,000万円以上(建築工事業は8,000万円以上)なら特定建設業。
- この金額は令和7年(2025年)2月1日の政令改正で、4,500万円/7,000万円から引き上げられた。
- 下請として施工するだけなら、金額にかかわらず一般建設業で足りる。請負金額自体に上限はない。
- 一般と特定は業種ごと。同じ業種で両方は受けられないが、業種が違えば組み合わせは可能。
- 特定の財産的基礎は4つすべて(欠損20%以下・流動比率75%以上・資本金2,000万円以上・自己資本4,000万円以上)。一般は3つのうちいずれか1つ。
- 指定建設業7業種(土木・建築・電気・管・鋼構造物・舗装・造園)は、実務経験では特定の技術者要件を満たせない。
分かれ目は「下請に出す総額」
まず結論です。特定建設業の許可が必要になるのは、発注者から直接請け負った1件の建設工事について、下請代金の総額が次の金額以上となる下請契約を締結して施工する場合です。
| 業種 | 下請代金の総額 |
|---|---|
| 建築工事業 | 8,000万円以上 |
| 上記以外の業種 | 5,000万円以上 |
これ以外の工事のみを施工する場合は一般建設業の許可になります。
「大きい工事だから特定が必要」ではなく、「下請に出す額が大きいから特定が必要」——ここを押さえてください。
なお、複数の下請業者に分けて出す場合は合計額で判断します。「1社あたり5,000万円未満に抑えれば大丈夫」とはなりません。
2025年2月に基準が上がった
この金額は、令和7年(2025年)2月1日施行の建設業法施行令の改正で引き上げられました。
| 項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 特定建設業が必要な下請代金 (建築工事業以外) | 4,500万円 | 5,000万円 |
| 特定建設業が必要な下請代金 (建築工事業) | 7,000万円 | 8,000万円 |
| 専任の監理技術者等が必要な請負代金 (建築一式工事以外) | 4,000万円 | 4,500万円 |
| 専任の監理技術者等が必要な請負代金 (建築一式工事) | 8,000万円 | 9,000万円 |
金額が上がったということは、一般建設業のままで対応できる範囲が広がったということです。以前は4,500万円で特定が必要になっていた案件が、いまは5,000万円まで一般で対応できます。
下請専門なら、いくらでも一般でよい
見落とされやすい、しかし実務でいちばん効く点です。特定建設業が問題になるのは、発注者から直接請け負った元請工事について下請に出す場合だけです。
つまり下請として施工するだけであれば、請け負う金額が5,000万円を超えても、1億円であっても、一般建設業の許可で足ります。
| 立場 | 下請に出す額 | 必要な許可 |
|---|---|---|
| 元請 | 5,000万円以上(建築工事業8,000万円以上) | 特定 |
| 元請 | 上記未満、または下請に出さない | 一般 |
| 下請 | ——(金額を問わない) | 一般 |
専門工事で下請に入ることが多い会社なら、特定を目指す必要はまずありません。財産要件も技術者要件も重くなるので、必要がないのに特定を取ると負担だけが増えます。
業種ごとに決まる
一般か特定かは、会社単位ではなく業種ごとに決まります。そして同じ業種について、一般と特定の両方を受けることはできません。その業種はどちらか一方です。
一方で、業種が異なれば組み合わせは可能です。たとえば土木工事業は特定、とび・土工工事業は一般、という形は取れます。広島県の建設業許可申請の手引きでも、特定と一般の両方の許可を持っている場合は、更新の際にその両方を更新するものとされています。
特定の財産的基礎は4つすべて
ここが特定建設業のいちばん高い壁です。一般と特定で、要件の構造そのものが変わります。
| 一般建設業 (いずれか1つ) | 特定建設業 (4つすべて) | |
|---|---|---|
| 資本金 | —— | 2,000万円以上 |
| 自己資本 | 500万円以上 | 4,000万円以上 |
| 欠損 | —— | 欠損の額が資本金の額の20%を超えない |
| 流動比率 | —— | 75%以上 |
| その他の充足方法 | 500万円以上の資金調達能力、または許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績 | —— |
一般は3つのうちいずれか1つに該当すれば足りますが、特定は4つを全部満たさなければなりません。1つでも欠ければ認められません。
そして見落としやすいのが、この判定は決算書で行われることです。資本金を2,000万円に増資しても、流動比率が75%を下回っていれば通りません。逆に言えば、決算の組み方次第で通る年と通らない年が出てきます。
指定建設業7業種という壁
もうひとつの関門が技術者です。特定建設業の営業所に置く特定営業所技術者は、次のいずれかに該当する必要があります。
- ① 国家資格等(1級の施工管理技士など、手引きの資格区分表で該当するもの)を持つ者
- ② 一般の営業所技術者の要件を満たし、かつ元請として4,500万円以上の工事について2年以上の指導監督的な実務経験を有する者
- ③ 国土交通大臣が①②と同等以上の能力を有すると認めた者
ところが、次の7業種(指定建設業)については②が使えません。①または③に限られます。
| 指定建設業 |
|---|
| 土木工事業/建築工事業/電気工事業/管工事業/鋼構造物工事業/舗装工事業/造園工事業 |
つまり土木や建築で特定を取るなら、1級の国家資格者が必要です。どれだけ長く大きな元請工事を回してきた方でも、資格がなければこの7業種では特定営業所技術者になれません。
▼営業所技術者そのものの要件と2024年改正はこちら:専任技術者(営業所技術者)とは?3つのルートと2024年改正
現場の専任は別の金額基準
混同されやすいので整理しておきます。「特定建設業が必要な金額」と「現場に専任の技術者を置かなければならない金額」は別物です。
工事1件の請負金額が4,500万円以上(建築一式工事は9,000万円以上)で、かつ公共性のある施設等に関する重要な工事にあたる場合、現場には専任の監理技術者等を置く必要があります。この金額も令和7年2月1日に引き上げられました(4,000万円/8,000万円から)。
特定建設業の許可を受けた元請が5,000万円以上を下請に出す現場では、主任技術者ではなく監理技術者を置くことになります。許可の区分(一般/特定)と、現場に置く技術者の種類(主任技術者/監理技術者)と、専任が必要かどうか——この3つは別の判定だと考えてください。
費用と期間、広島県の申請窓口
知事許可の新規申請の手数料は90,000円です。広島県の標準処理期間はおおむね45日、許可の有効期間は5年です。このほかに、登記事項証明書や納税証明書などの取得実費と、行政書士に依頼する場合はその報酬がかかります。当事務所の報酬は業種数や証明の難易によって変わりますので、お見積りをお出ししています。
申請先は、主たる営業所の所在地によって分かれます。
| 窓口 | 電話 | 管轄 |
|---|---|---|
| 西部建設事務所 建設業課 広島市南区比治山本町16-12 | 082-250-8161 | 広島市、大竹市、廿日市市、江田島市、安芸郡、山県郡 |
| 西部建設事務所 呉支所 管理課 呉市中央一丁目3-25 | 0823-22-5400 | 呉市 |
| 西部建設事務所 東広島支所 管理課 東広島市西条昭和町13-10 | 082-422-6911 | 竹原市、東広島市、大崎上島町 |
| 東部建設事務所 管理課 福山市三吉町一丁目1-1 | 084-921-1311 | 三原市、尾道市、福山市、府中市、世羅町、神石高原町 |
| 北部建設事務所 管理課 三次市十日市東四丁目6-1 | 0824-63-5181 | 三次市、庄原市、安芸高田市 |
制度全般の所管は広島県建設産業課(広島市中区基町10-52/082-513-3822)です。なお、2つ以上の都道府県に営業所を置く場合は国土交通大臣許可になり、窓口が変わります。
- ① 元請として受注するかを確かめる。下請として施工するだけなら、金額にかかわらず一般で足ります。
- ② 下請に出す代金の総額を見積もる。5,000万円以上(建築工事業8,000万円以上)なら特定。複数の下請に分けても合計で判断します。
- ③ 業種ごとにどちらにするかを決める。同じ業種で一般と特定の両方は受けられません。
- ④ 特定の財産的基礎を4つすべて点検する。決算書で判定されるため、顧問税理士の方とご相談ください。
- ⑤ 特定営業所技術者を確保する。指定建設業7業種では実務経験が使えず、1級の国家資格者等が必要です。
「特定を取りたい」というご相談で、まずお聞きするのは「元請で下請にいくら出されますか」です。ここを確かめると、実は特定が要らないことが半分くらいあります。下請で入る工事がいくら大きくても、一般のままで問題ないからです。
本当に特定が必要な場合は、話が逆に重くなります。財産の4要件は決算書で見られ、しかも更新のたびに見られます。取った年は満たしていても、その後の決算で流動比率を割れば更新できません。ですから「今年取れるか」ではなく「5年維持できるか」でお話しします。
そして土木や建築で特定を目指す方には、1級の資格者が社内にいるかどうかを最初に確認します。この7業種は実務経験では通りません。いなければ、採用か資格取得の計画から始まります。思い立ってすぐ取れる許可ではない——そこを早めにお伝えするのが、私の役目だと思っています。
よくある質問
一般と特定の分かれ目は、請け負う金額ではなく元請として下請に出す代金の総額です。5,000万円以上(建築工事業8,000万円以上)なら特定。この基準は2025年2月1日に引き上げられました。
下請として施工するだけなら、金額にかかわらず一般で足ります。必要がないのに特定を取ると、財産要件と技術者要件の負担だけが増えます。
特定を目指すなら、関門は2つ。財産的基礎の4要件を更新のたびに満たし続けられるか、そして指定建設業7業種では1級の国家資格者が必要だという点です。いずれも年単位の準備になりますので、早めに現状を確かめてください。
- 建設業法(第3条の許可の区分、第15条の特定建設業の許可の基準、第26条の主任技術者および監理技術者の設置等)
- 建設業法施行令(特定建設業に係る下請代金の額、専任の監理技術者等を要する請負代金の額、指定建設業)
- 国土交通省 報道発表「建設業の各種金額要件や技術検定の受検手数料を見直します」(令和7年2月1日施行。特定建設業に係る下請代金は4,500万円→5,000万円、建築工事は7,000万円→8,000万円。専任の監理技術者等は4,000万円→4,500万円、建築一式工事は8,000万円→9,000万円)
- 広島県建設産業課「建設業許可申請の手引き(令和7年2月以降)」(一般と特定の区分、特定建設業の財産的基礎4要件、一般建設業の財産的基礎、特定営業所技術者の要件と指定建設業7業種の扱い、特定と一般の両方を有する場合の更新)
- 広島県「建設業の許可制度について」(申請窓口の所在地・電話番号・管轄区域)
- 国土交通省中部地方整備局「適正な施工の確保」(令和7年2月時点の金額要件、指定建設業7業種、技術者の資格要件)
2026年10月時点の内容です。金額要件や窓口の管轄は変更されることがあるため、申請前に広島県建設産業課または所管の建設事務所でご確認ください。
西岡行政書士事務所へ
「特定を取るべきか分からない」「元請の話が来たが許可が足りているか不安」「更新で財産要件を割りそう」——まず下請に出す金額と業種をお聞かせください。特定が本当に必要かの判断、財産4要件の現状確認、技術者の手当ての計画、申請書の作成・提出まで一貫してお任せください。要件が整っていない段階でのご相談も歓迎します。