経営事項審査(経審)とは?
P点の仕組みと2026年7月改正
公共工事を元請として受けたい——そう考えたときに越えるのが経営事項審査(経審)です。許可を持っているだけでは入札に参加できません。
経審の特徴は、会社が点数で評価されることです。そして2026年7月1日から内容が変わりました。社会保険未加入のマイナス40点が3項目まとめて廃止され、新しい加点項目が1つ増えています。この記事では、点数の仕組み、手続の順番、そして改正点を整理します。
- 経審は公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者が必ず受けなければならない審査。下請だけなら不要。
- 総合評定値はP=0.25X1+0.15X2+0.20Y+0.25Z+0.15W。ウエイトが最大なのはX1(完成工事高)とZ(技術力)で各0.25。
- 経営状況分析(Y)は登録経営状況分析機関に申請。許可行政庁ではない。
- 結果通知書の有効期間は審査基準日から1年7か月。審査基準日は原則として申請日の直前の事業年度終了の日。
- 決算変更届が前提。未提出の年度があると経審に進めない。
- 令和8年7月1日以降の申請から改正——社会保険未加入の減点3項目(各マイナス40点)を廃止、自主宣言制度の加点5点を新設、就業履歴の措置を15点→10点・10点→5点に引下げ、建設機械に不整地運搬車・アスファルト・フィニッシャを追加。
- 広島県の手数料は経営規模等評価 8,100円+2,300円×業種数、総合評定値請求 400円+200円×業種数。
経営事項審査とは
経営事項審査とは、公共性のある施設又は工作物に関する建設工事(公共工事)を発注者から直接請け負おうとする建設業者が、必ず受けなければならない審査です。会社の経営状況と、経営規模・技術的能力その他の客観的事項を数値で評価します。
逆に言えば、公共工事の元請を目指すなら許可を取っただけでは足りないということになります。
手続の順番——経審は単独で完結しない
経審でつまずく原因のほとんどが順番です。経審は前後に別の手続があり、単独では完結しません。
- ① 決算を確定させる。審査基準日は原則として申請日の直前の事業年度終了の日です。
- ② 決算変更届を提出する。毎事業年度経過後4月以内。これが出ていないと経審に進めません。
- ③ 登録経営状況分析機関に経営状況分析を申請する。ここは広島県ではなく分析機関です。分析結果通知書を受け取ります。
- ④ 許可行政庁に経営規模等評価の申請と総合評定値の請求をする。分析結果通知書を添えて提出します。
- ⑤ 結果通知書を受けて、発注者ごとの入札参加資格審査を申請する。ここでようやく入札に参加できます。
| 手続 | 申請先 |
|---|---|
| 決算変更届 | 許可行政庁(広島県知事許可なら県) |
| 経営状況分析(Y) | 登録経営状況分析機関 |
| 経営規模等評価(X1・X2・Z・W) | 許可行政庁 |
| 総合評定値(P)の請求 | 許可行政庁 |
| 入札参加資格審査 | 発注者ごと(県、市町、国など) |
最後の入札参加資格審査は発注者ごとという点も重要です。経審を受けただけでは入札に参加できません。広島県の工事に出たいなら県に、広島市の工事に出たいなら市に、それぞれ申請します。発注者の数だけ手続があると考えてください。
総合評定値(P点)の仕組み
P点は、5つの項目にウエイトを掛けて合算します。
| 記号 | ウエイト | 評価する内容 |
|---|---|---|
| X1 | 0.25 | 許可業種別の完成工事高(経営規模) |
| X2 | 0.15 | 自己資本額と利払前税引前償却前利益(経営規模) |
| Y | 0.20 | 経営状況(財務分析) |
| Z | 0.25 | 技術職員数と元請完成工事高(技術力) |
| W | 0.15 | 社会性等(その他の審査項目) |
見ていただきたいのがウエイトの配分です。最も重いのはX1(完成工事高)とZ(技術力)で、それぞれ0.25。この2つで全体の半分を占めます。
Y(経営状況分析)は8つの指標で評価されます。負債抵抗力(純支払利息比率、負債回転期間)、収益性・効率性(総資本売上総利益率、売上高経常利益率)、財務健全性(自己資本対固定資産比率、自己資本比率)、絶対的力量(営業キャッシュフロー、利益剰余金)です。
2026年7月1日の改正
令和8年2月6日に公布され、令和8年7月1日以降の申請から適用されている改正です。4点あります。
① 社会保険未加入の減点が廃止された
これまでW1にあった次の3項目が廃止されました。
| 項目 | 改正前の点数 |
|---|---|
| 雇用保険の未加入 | マイナス40点 |
| 健康保険の未加入 | マイナス40点 |
| 厚生年金保険の未加入 | マイナス40点 |
合計でマイナス120点あった枠がなくなりました。背景は明快で、社会保険への加入はすでに許可の要件になっているため、減点項目として重ねて置く必要がなくなったというものです。
② 自主宣言制度の加点が新設された
新たな加点項目として、「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」の宣言の有無が加わりました。点数は5点です。
加点の要件は、審査基準日が宣言日以降であること、そして宣言書と誓約書を提出していることです。
③ 就業履歴の措置の点数が下がった
建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況の点数が引き下げられました。
| 対象 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 民間工事を含む全ての建設工事 | 15点 | 10点 |
| 全ての公共工事 | 10点 | 5点 |
④ 建設機械の加点対象が広がった
建設機械の保有による加点の対象に、不整地運搬車(土砂の運搬等に使用)とアスファルト・フィニッシャ(道路舗装に使用)が追加されました。すでにお持ちの機械が加点対象になっている可能性があります。
有効期間は1年7か月
経審の結果通知書の有効期間は、審査基準日から1年7か月です。審査基準日は原則として申請日の直前の事業年度終了の日——つまり決算日です。
ここが実務で効きます。有効期間が1年ではなく1年7か月なのは、決算から経審を受けるまでの時間(決算確定、決算変更届、経営状況分析、経審申請、審査)を見込んだ猶予です。7か月の余裕があると考えてください。
| 時点 | できごと |
|---|---|
| 3月31日 | 審査基準日(決算日) |
| 7月末 | 決算変更届の期限(経過後4月以内) |
| 翌年10月31日 | 結果通知書の有効期間の満了(審査基準日から1年7か月) |
▼決算変更届と更新の期限はこちら:建設業許可の更新と決算変更届|5年ごと・毎年・2週間の期限
広島県の手数料
広島県に申請する場合の手数料は、審査対象の業種数によって変わります。経営規模等評価の申請が8,100円に審査対象業種数1業種あたり2,300円を加えた額、総合評定値の請求が400円に通知対象業種数1業種あたり200円を加えた額です。
たとえば3業種で両方を申請すると、経営規模等評価が8,100円+2,300円×3業種=15,000円、総合評定値請求が400円+200円×3業種=1,000円で、合計16,000円になります。このほかに登録経営状況分析機関に支払う分析手数料が別途かかります。行政書士に依頼する場合はその報酬も加わります。当事務所の報酬は業種数や決算変更届の未提出の有無によって変わりますので、お見積りをお出ししています。
制度についての事前相談は、所管の建設事務所または広島県建設産業課(広島市中区基町10-52/082-513-3822)で受け付けています。
P点を上げる現実的な打ち手
「点数を上げたい」というご相談は多いのですが、項目によって動かしやすさがまったく違います。整理するとこうなります。
| 項目 | 動かしやすさ | 打ち手 |
|---|---|---|
| W(社会性等) | 短期 | 自主宣言制度の宣言、建設業退職金共済や退職一時金制度への加入、防災協定、建設機械の保有の申告、ISO等の登録 |
| Y(経営状況) | 中期 | 決算の組み方。自己資本の充実、負債の圧縮、利益剰余金の積み上げ |
| X2(自己資本・利益) | 中期 | 増資、利益の内部留保 |
| Z(技術力) | 長期 | 技術職員の採用、資格取得の支援、元請工事の積み上げ |
| X1(完成工事高) | 長期 | 受注の積み上げ(実績なので操作できない) |
ウエイトが大きいX1とZは長期の話です。今期に効かせたいならW、来期以降を見るならYとX2という順になります。
▼元請として下請に出す金額で変わる一般と特定の区分はこちら:一般建設業と特定建設業の違いは?5,000万円の基準と財産4要件
経審のご相談でいちばん多いのが、「入札の公告が出たので経審を受けたい」というお話です。ただ、ここからだと間に合わないことがほとんどです。決算変更届を出し、分析機関に申請し、県の審査を受け、さらに入札参加資格の審査がある。手続が4段重ねなのです。
ですから私は、「公共工事を考えているなら、受注の予定がなくても毎年受けておいてください」とお伝えしています。経審は切れ目を作らないことが価値です。1年空けると、次に出たい工事に出られません。
そしてもうひとつ。点数の話は決算前にしないと意味がありません。決算が締まってから「Wで加点できませんか」と言われても、宣言日が審査基準日より後になってしまえば使えないのです。決算の2〜3か月前に一度、取れる加点を洗い出す——この一回で、翌年の点数が変わります。
よくある質問
経審は公共工事を元請として受けるために必ず受ける審査です。下請だけなら不要です。点数はP=0.25X1+0.15X2+0.20Y+0.25Z+0.15Wで、重いのは完成工事高(X1)と技術力(Z)。
手続は決算 → 決算変更届 → 経営状況分析(分析機関)→ 経営規模等評価・総合評定値(許可行政庁)→ 入札参加資格審査(発注者ごと)の4段重ねです。公告が出てから動くと間に合いません。有効期間は審査基準日から1年7か月——毎年受け続けて切れ目を作らないことが価値です。
そして令和8年7月1日以降の申請から、社会保険未加入の減点3項目(各マイナス40点)が廃止され、自主宣言制度の5点が新設されました。この5点は審査基準日が宣言日以降であることが条件ですので、決算前に手続してください。
- 建設業法(経営事項審査、経営規模等評価、総合評定値)
- 広島県建設産業課「経営事項審査の概要」(公共工事を直接請け負おうとする建設業者が必ず受けなければならない審査である旨、経営状況分析(Y)と経営規模等評価(XZW)の区分、登録経営状況分析機関、結果通知書の有効期間は審査基準日から1年7か月、審査基準日は原則として申請日の直前の事業年度終了の日、手数料=経営規模等評価8,100円+2,300円×審査対象業種数/総合評定値請求400円+200円×通知対象業種数)
- 国土交通省「経営事項審査及び総合評定値の請求について」(経営事項審査の定義、総合評定値は平成16年3月の法改正で審査体系から切り離され許可行政庁の計算事務となり任意請求となった旨)
- 国土交通省「経営事項審査の主な改正事項(令和8年2月6日公布・令和8年7月1日施行)」(自主宣言制度の宣言の有無を5点で新設、就業履歴を蓄積するために必要な措置を15点→10点・10点→5点に引下げ、雇用保険・健康保険・厚生年金保険の各未加入の減点マイナス40点を廃止、建設機械に不整地運搬車およびアスファルト・フィニッシャを追加、令和8年7月1日以降の申請に適用)
- 国土交通省九州地方整備局 経営事項審査の改正資料(総合評定値の算式P=0.25X1+0.15X2+0.20Y+0.25Z+0.15W、各項目の評価内容、経営状況分析Yの8指標)
2026年10月時点の内容です。審査項目や点数は改正されることがあるため、申請前に広島県建設産業課または所管の建設事務所でご確認ください。
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「公共工事に出たい」「経審が切れそう」「点数を上げたい」——経審は決算変更届から入札参加資格まで4段重ねの手続です。順番の組み立て、登録経営状況分析機関への申請、経営規模等評価と総合評定値の請求、そして決算前の加点の洗い出しまでお任せください。2026年7月改正で新設された加点は、決算前に動けば今期から取れます。