「広島でバーを開業したいが、どんな手続きが必要なのか?」「深夜営業届を出せばOKなのか、それとも風営法許可が必要なのか?」——バー開業を検討する方の多くが、最初にぶつかる疑問です。
「バー」という業態は実は非常に幅広く、例えば、ショットバー・ガールズバー・コンセプトバー・個室バー・スポーツバーなど多種多様です。それぞれで必要な手続きが異なるため、自分のお店がどのカテゴリーに該当するかを正確に把握しないと、必要な許認可を取らずに営業してしまう可能性がありますよね。
この記事では、バーの業態を整理して、それぞれに必要な手続き(深夜営業届出 or 風営法許可)を、行政書士の視点から判定して行こうと思います。「自分のお店はどの手続きが必要か」が、この記事を読み終わる頃には明確になればと考えています。
「酒類提供のみ」のバーは深夜営業届出。「接待行為」「個室・区画席」「低照度」のいずれかがあれば風営法許可が必要です。営業時間が0時前で終わるバーなら、どちらも不要のケースもあります。
1. バーの開業に必要な手続きは「3つの軸」で決まる
バーの開業に必要な手続きを判定するには、概ね3つの軸で自分のお店をチェックします。
判定の3軸
| 判定軸 | 内容 | 該当する場合に必要な手続き |
|---|---|---|
| 軸1:酒類提供 | お酒を提供するか? | 飲食店営業許可(保健所) |
| 軸2:営業時間 | 午前0時を超えて酒類提供するか? | 深夜営業届出 |
| 軸3:営業形態 | 接待・低照度・区画席のいずれかに該当するか? | 風営法許可(1〜3号営業) |
3つの軸のうち、軸1(飲食店営業許可)はすべてのバーで必須です。軸2と軸3が、業態によって必要・不要が分かれます。
軸2と軸3の関係性
軸2と軸3は、両方が必要になるケースは原則ありません。理由は次の通りです。
| 営業形態 | 必要な手続き |
|---|---|
| 接待・低照度・区画席なし、0時超営業あり | 深夜営業届出のみ |
| 接待・低照度・区画席のいずれかあり | 風営法許可のみ |
風営法許可(1〜3号営業)を取得すれば、原則として午前0時までの営業に制限されます。一方、深夜営業届出を出すお店は、接待行為などをしない前提で午前0時以降も営業できます。つまり、両者は「営業時間 vs 営業形態」のトレードオフ関係にあり、両方を同時に取得することはできないのです。
2. ショットバー(接待なし・通常照度)
最もシンプルで、開業数も多いタイプのバーです。
ショットバーの典型例
- カウンターでお酒を提供
- バーテンダーは注文取りと提供のみ
- お客様との会話は適度に行うが、特定の客の隣に長時間座ることはない
- 通常の照度(10ルクス以上)
- 客席に高い仕切りなどはない
必要な手続き
| 営業時間 | 必要な手続き |
|---|---|
| 0時前で閉店(例:18:00〜23:30) | 飲食店営業許可のみ |
| 0時超営業(例:19:00〜翌2:00) | 飲食店営業許可+深夜営業届出 |
このタイプのバーは、深夜営業届出での対応が一般的です。「お酒を中心に提供して深夜まで営業する」というスタイルなら、これで問題ありません。
注意点
ショットバーでも、バーテンダーがお客様の隣に座って長時間会話したり、お酌をしたりすると「接待」と判断され、風営法許可が必要になります。「うちはバーだから接待じゃない」と思い込まず、自店の実態を冷静に見直すことが重要です。
3. ガールズバー(接待の有無で大きく変わる)
近年特に判断が難しくなっているのがガールズバーです。
ガールズバーの2つのパターン
| パターン | 営業内容 | 必要な手続き |
|---|---|---|
| 接待なしのガールズバー | カウンター越しの接客のみ。スタッフは席に着かない | 飲食店営業許可+深夜営業届出 |
| 接待ありのガールズバー | スタッフが客の隣で会話・お酌・カラオケ等 | 飲食店営業許可+風営法1号許可 |
「接待なし」を維持するためのポイント
ガールズバーで深夜営業届出のまま営業するには、「接待行為」を一切しないことが必要です。
| OK行為 | NG行為(接待になる) |
|---|---|
| カウンター越しの注文取り | カウンター越しでも、特定の客と長時間会話を続ける |
| お酒の提供 | 客の隣に座って提供する |
| 簡単な世間話 | 客と一緒にお酒を飲む |
| 客席間を回って提供 | 特定の席に長時間留まる |
| 客のカラオケ選曲を手伝う | 客と一緒にカラオケを歌う |
「カウンター内のスタッフが客と会話するのはOKだが、特定の客と長時間つきっきりになる、お酌するために客の隣に座る、これらはNG」という線引きが、警察の判断基準です。
第5記事との連携
風営法に該当する接待行為の判定基準については、第5記事「広島の風営法許可とは?4種類の営業許可をわかりやすく解説」で詳しく解説しています。ガールズバー開業を検討中の方は、こちらと併せてご確認ください。
4. コンセプトバー・コンセプトカフェ(業態判定が複雑)
メイドカフェ・アニメコラボバー・キャラクターバーなど、コンセプトに特化したバーは、業態判定が特に難しいカテゴリーです。
コンセプトバーの判定ポイント
| サービス内容 | 該当しうる手続き |
|---|---|
| お酒の提供のみ、スタッフは衣装を着てカウンター内 | 深夜営業届出 |
| 客席で注文取り・配膳のみ(接客の延長で会話あり) | 深夜営業届出(境界例) |
| スタッフが客と一緒に時間を過ごす(チェキ・トーク等) | 風営法1号許可(接待あり) |
| 客席が個室や半個室で区切られている | 風営法3号許可 |
実務でよくあるパターン
第5記事でも触れたように、コンセプトカフェやメイドカフェでは、最初は深夜営業届出で開業し、軌道に乗ってから風営法1号許可に切り替えるパターンが実務でよく見られます。
開業初期はサービスをシンプルに保ち、運営が安定してきた段階でサービスメニューを拡充する——この時にチェキ撮影・客席同席などの接待行為が入ってくるなら、風営法許可への切り替えが必要です。
「A店はOK、B店はダメ」になる現場の難しさ
例えばチェキ撮影などは、様々な要因が絡みます。最近聞くようになったマッチョバーなどの一部サービスなどもそうなのですが、「A店はOKなのにB店はダメと言われた」ということが許可申請時にあるかと思います。
業態の細部・サービス内容・店舗の構造によって判断が分かれるため、「あの店が大丈夫だから、うちも大丈夫」という横並びの判断は危険です。不安な部分は必ず担当警察署に伺うことをお勧めいたします。
コンセプトバーの落とし穴
「うちはチェキを撮るだけだから接待じゃない」「歌うだけだから問題ない」と思っていても、警察の判断は実態ベースです。
- スタッフが客の隣に座ってチェキを撮る → 接待の可能性
- スタッフが客と一緒にカラオケを歌う → 接待の可能性
- スタッフが客のテーブルでトークタイムを取る → 接待の可能性
コンセプトに凝るほど、サービス内容が複雑化し、風営法該当の可能性も上がります。開業前に「どこまでやるか」を明確にし、必要な許可を選ぶことが重要です。
5. 個室バー・半個室バー(風営法3号営業の典型)
「プライベート感」を売りにする個室バー・半個室バーは、ほぼ確実に風営法3号営業に該当します。
個室バーの判定基準
| 構造 | 該当する手続き |
|---|---|
| 完全な個室で外から見えない | 風営法3号営業 |
| 高さ1m以上の仕切り(5㎡以上の区画) | 風営法3号営業の可能性 |
| 高さ1m未満の仕切り | 通常の飲食店扱い |
| 半個室だが上部が開放されている | 個別判断 |
よくある誤解
「個室といっても、半個室みたいなものだから風営法は関係ない」と考える方がいますが、これは危険な誤解です。
風営法上の「区画」の判定基準は、客席間の見通しが妨げられているかどうかです。背の高いソファやパーテーションで仕切られていると、見通しを妨げる構造として風営法3号営業に該当する可能性が高くなります。
物件選定や内装設計の段階で、「どこまで仕切るか」「どの程度の高さで区切るか」を意識しないと、開業後に「風営法違反」と指摘される可能性があります。
6. スポーツバー・ダーツバー(基本は深夜営業届出)
スポーツ観戦やダーツプレイを楽しむタイプのバーです。
スポーツバーの典型例
- 大型モニターでスポーツ中継を放映
- お酒・軽食の提供
- 客同士の会話を楽しむ雰囲気
- スタッフは注文取りと提供のみ
必要な手続き
| 営業時間 | 必要な手続き |
|---|---|
| 0時前で閉店 | 飲食店営業許可のみ |
| 0時超営業 | 飲食店営業許可+深夜営業届出 |
ダーツバーの注意点
ダーツバーの場合、ダーツマシンが「遊技用設備」とみなされるかどうかが焦点です。
| ダーツマシンの種類 | 判定 |
|---|---|
| 通常のダーツマシン(プレイ料金あり) | 一般的に風営法4号営業に該当しない |
| 賭け事の対象になり得る設備 | 風営法4号営業の可能性 |
通常のダーツマシンを設置するだけなら、深夜営業届出で対応可能です。ただし、ダーツの腕前で景品を提供するような形態は、風営法4号営業(遊技場営業)に該当するリスクがあります。
当事務所のお客様でも、お店にダーツマシンを置かれる方は多いですが、深夜営業届出で対応されているケースが多数を占めています。
7. 元広島県警察官の視点:「グレー業態」を作らない開業の心得
僕は元広島県警察官として13年間勤務しました。その経験から、バー開業時に「グレーゾーン」を作らないための心得をお伝えします。
心得1:「業態の名前」ではなく「実態」で考える
警察は「お店の看板」や「業態名」では判断しません。実際にどんなサービスが提供されているか、どんな構造の店舗か、これらの実態で判断します。
「ガールズバーだから深夜営業届でOK」「コンセプトカフェだから風営法は関係ない」という思い込みは危険です。自店の営業実態を、第三者の目で冷静に見直すことが重要です。
心得2:「線引きを越えそうなら、最初から風営法許可」
「接待ギリギリの線で深夜営業届を維持しよう」という運営方針は、長期的には大きなリスクになります。
近隣からの通報・客同士のトラブル・スタッフの離職時のクレームなど、警察の目に触れるきっかけは数多くあります。一度立入検査が入って「実態は接待行為あり」と判断されると、営業停止処分の対象になりかねません。
「グレーゾーンで攻める」より「最初から風営法許可を取る」ほうが、長期的に安心して営業できるのが実情です。
心得3:「変更があったらすぐ届出」を徹底する
バーの営業形態は、運営しているうちに変化していくものです。
- 最初は普通のバーだったが、スタッフが客と話すようになった
- 最初は1部屋だったが、後から個室を作った
- 最初は深夜営業だけだったが、ホストクラブ的な接待を始めた
このような変化があった時点で、必要な手続きが変わります。「面倒だから後回し」にすると、後の立入検査で問題になります。営業形態の変更があれば、すぐに変更届や新規許可申請を行うことが、結果的にお店を守ることになります。
お店の経営は、人がかかわるものですから業態も変わっていくのは当然のこと。その時々で必要な動きをしていくことが、長くお店を続けるコツだと考えています。
8. よくある質問(FAQ)
ここでは、当事務所に実際あった質問を思い出してまとめました。
9. まとめ
バー開業に必要な手続きの判定について、ポイントを整理します。
- バーの手続きは「酒類提供」「営業時間」「営業形態」の3軸で判定する
- 通常のショットバー・スポーツバー・ダーツバーは深夜営業届出で対応可能
- ガールズバー・コンセプトバーは「接待行為の有無」で大きく分かれる
- 個室バー・半個室バーは風営法3号営業に該当することが多い
- 「業態名」ではなく「実態」で警察は判断する
- グレーゾーンで攻めるより、最初から適切な許可を取るほうが長期的に安心
「自分のお店はどの手続きか」を判断する際の最大のコツは、内装工事や物件契約を始める前に、業態を明確に決めておくことです。後から変更すると、費用も時間も大幅に増えてしまいます。