「3ヶ月後に開店予定だけど、深夜営業届はいつ出せばいいんだろう?」「ぎりぎりに提出して間に合うのか不安」——開店日が見えてきた段階で、こうした疑問を持つ方は多いと思います。
深夜営業届出は法律上「営業開始の10日前まで」と定められていますが、実際にはそれより早めに準備を始めないと間に合わないのが現実です。書類収集に2〜3週間、図面作成に1週間、不備による差し戻しの可能性も考慮すると、最低でも開店2ヶ月前から動き始めるのが理想です。
この記事では、開店日から逆算した深夜営業届出の提出スケジュールを、行政書士の視点から具体的にお伝えします。「2ヶ月前」「1ヶ月前」「2週間前」という時系列に沿って、何をすべきかが分かるように整理しました。
法律上は「営業開始の10日前まで」ですが、実務上は「開店2ヶ月前から準備開始」が標準。物件契約からのスケジュール感を意識しないと、開店日に間に合わないリスクがあります。
1. 法律上のルール:「営業開始の10日前まで」
まず、深夜営業届出の提出期限について、法律上のルールを確認します。
風営法施行規則において、深夜における酒類提供飲食店営業の届出は、営業を開始する日の10日前までに管轄警察署に提出することが定められています。
「営業開始の10日前」とはいつのことか?
| 事象 | 日付の例 |
|---|---|
| 営業開始予定日 | 2026年7月1日 |
| 提出期限(10日前) | 2026年6月21日まで |
| 推奨提出時期 | 2026年6月14日頃まで(余裕を持って) |
10日前とは、営業開始日を含めない計算になります。例えば7月1日開店なら、6月21日までに提出が必要です。
「10日前」の意味を勘違いしないように注意
ここで多くの方が誤解しがちなのが、「10日前に書類を提出すれば、その日から営業できる」と考えてしまうことです。
正確には次のようになります。
お店の営業自体は可能です。なぜなら深夜営業の届出は飲食店営業許可をすでに取得していることが前提の届出だからです。深夜営業(午前0時〜午前6時までの間)をしなければ営業をしても問題ありません。広島県警の担当官に伺ったので間違いありません。
なお、深夜営業は10日後から始めてくれ、とのことでした。
2. 実務上の理想:「開店2ヶ月前から準備開始」
法律上のルールは「10日前まで」ですが、実務上はそれより遥かに早く準備を始める必要があります。
なぜ2ヶ月前から動くべきか
| 必要な作業 | 所要時間の目安 |
|---|---|
| 物件選定・用途地域確認 | 2〜4週間 |
| 飲食店営業許可(保健所)の取得 | 2〜3週間 |
| 必要書類の収集 | 1〜2週間 |
| 平面図・周辺地図の作成 | 1週間 |
| 警察署への提出・受理 | 1〜数日 |
| 不備による差し戻し対応の予備時間 | 1〜2週間 |
| 合計 | 約7〜12週間 |
書類作業だけ見れば3〜4週間で済みそうに見えますが、実際には飲食店営業許可(保健所)の取得が前提となるため、その分の時間も加算する必要があります。
「ぎりぎり提出」のリスク
「10日前ぎりぎりに出せばいい」という認識で動くと、次のようなリスクがあります。
- 図面に不備があり、差し戻しになって期限に間に合わない
- 飲食店営業許可がまだ降りていなくて、深夜営業届出が出せない
- 開店日が後ろ倒しになり、内装工事の支払いタイミングや広告計画にも影響する
特に「飲食店営業許可と深夜営業届出はセットで考える」という点は重要です。深夜営業届出には飲食店営業許可証の写しが必須なので、保健所許可が降りる前は提出ができません。
3. 開店日から逆算したスケジュール(標準版)
ここからは、開店日を基準に逆算したスケジュールを具体的に見ていきます。
4. ケース別スケジュール:「急ぎ」と「余裕あり」の場合
実際の開業準備では、計画通りに進まないことも多々あります。ケース別のスケジュール感をお伝えします。
ケース1:急ぎ(開店まで1ヶ月しかない)
「物件は決まったけど、開店まで1ヶ月しかない」というケースです。
| やること | 期間 |
|---|---|
| 飲食店営業許可(保健所)申請・取得 | 2〜3週間 |
| 必要書類の取得 | 並行して進める |
| 平面図作成(行政書士に外注がベター) | 3〜5日 |
| 警察署へ提出 | 開店10日前 |
| 開店 | 1ヶ月後 |
このスケジュールで進める場合、行政書士への依頼が現実的です。書類作成・図面作成・警察署対応をすべて並行で進めないと間に合いません。
なお、僕の事務所が依頼として受けた時、最短で3日で警察署に提出をした実績があります。僕が申請に慣れていて図面作成などがすぐに作成できてしまうというのも理由の一つですが、これにはいくつかの条件があります。
最短3日を実現するための条件
① 申請者の住民票がすぐに準備できた
住民票は住んでいる管内の役所で取得する必要がありますが、それが近所であったり、役所がすぐに準備してくれる必要があるということです。
② 依頼者と連絡が密にできた
行政書士に申請を依頼した場合、もちろん書類作成は行政書士が行います。しかし、お店を経営するのは依頼者さんです。行政書士が勝手にお店をどんな方針で経営していくのか、申請書に記載する内容について連絡を密にできなければ行政書士は想像で書類を書くことはできません。適当に記載してお店に迷惑をかけてしまうことになりかねませんからね。
ケース2:余裕あり(開店まで3ヶ月以上)
「事業計画から練って、開店まで3ヶ月以上ある」という余裕のあるケースです。
| やること | 期間 |
|---|---|
| 物件選定・契約 | 開店3ヶ月前 |
| 飲食店営業許可申請 | 開店2.5ヶ月前 |
| 内装工事の発注 | 開店2ヶ月前 |
| 書類収集・図面作成 | 開店1.5ヶ月前 |
| 警察署へ提出 | 開店1ヶ月前 |
| 開店 | 計画通り |
このスケジュールなら、自分で書類作成にチャレンジする余裕もあります。差し戻しがあっても十分対応できる時間配分です。
5. 元広島県警察官の視点:「ぎりぎり提出」を避けるべき本当の理由
僕は元広島県警察官として13年間勤務しました。その経験から、「10日前ぎりぎり」での提出を避けるべき理由をお伝えします。
理由1:警察側のチェック時間が確保できない
「10日前まで」というルールは、警察側がしっかりと書類をチェックするための時間を確保するためのものです。ぎりぎりに提出された書類は、当然ながら警察側も時間をかけて確認できません。
形式不備が見落とされたまま受理された場合、後の立入検査で問題が発覚するリスクがあります。「ぎりぎりに通ったから大丈夫」ではなく、「余裕を持って提出したから安心して営業できる」のほうが、結果的にお店のためになります。
理由2:不備があった時の修正時間がない
ぎりぎり提出して不備が見つかった場合、修正と再提出のための時間がほぼありません。開店日を後ろ倒しするか、不完全な書類で押し通すかの二択になります。
実際に現役時代に、開店日が迫った経営者が「もう開店の宣伝もしてしまった、何とかしてほしい」と窓口で頭を下げる場面を見たことがあります。警察側も法律に従って動くしかないので、ルールを曲げることはできません。3週間前に提出していれば、こうした事態は避けられたはずです。
実際に依頼者さんで10日前に提出というのを失念していて営業開始日が遅れた方もいらっしゃいます。僕が依頼を受けた時にはもう営業開始予定日の4日前だったのです。もしもその日に警察署に申請できたとしてもその時には間に合いませんでした。お早目の準備をお勧めいたします。
理由3:「ぎりぎり提出」は警察側の印象が良くない
これは目に見えないコストですが、書類審査の際に「ぎりぎりに出してきた経営者」と「余裕を持って出してきた経営者」では、警察側の印象がまるで違います。
「ぎりぎり提出 = 計画性のない経営者」と判断されてしまうと、その後の立入検査の頻度や、近隣からの苦情があった際の対応にも影響することがあります。届出の提出時期は、警察との関係性を作る最初の一歩でもあるのです。
6. よくある質問
7. まとめ
深夜営業届出のスケジュール感について、ポイントを整理します。
- 法律上は「営業開始の10日前まで」だが、実務上は「2ヶ月前から準備開始」が理想
- 飲食店営業許可(保健所)の取得が前提なので、両方を並行して進める
- 警察署への提出は、開店3週間前を推奨(差し戻し対応の余裕を確保)
- 急ぎの場合(1ヶ月以内)は、行政書士への依頼を検討すべき
- 「ぎりぎり提出」は警察側の印象が悪く、立入検査などにも影響しうる
開業準備は時間との戦いです。物件契約からオープンまでの全工程を時系列でイメージしながら、深夜営業届出のタイミングを組み込んでいくことが、スムーズな開業の鍵になります。