通信販売酒類小売業免許とは?
ネットで酒を売る3つの壁
「ネットショップでお酒を売りたい」というご相談は、年々増えています。必要になるのが通信販売酒類小売業免許です。ところがこの免許は、取れたとしても売れるものが限られるという、ほかの許認可にはない特徴を持っています。
つまずくのは決まって3か所——扱える酒類の制限、蔵元が出す証明書、そして表示義務です。しかもその手前に、そもそもこの免許が要らない場合という分かれ道もあります。順に整理します。
- 必要なのは2都道府県以上の広範な地域を対象に通信販売する場合。販売場と同じ都道府県内だけなら一般酒類小売業免許で足りる。
- 壁①扱える酒類——国産は課税移出数量が品目ごとにすべて3,000キロリットル未満の製造者のものに限られる。輸入酒類は品目・数量の制限なし。
- 壁②蔵元が発行する「通信販売の対象となる酒類であることの証明書」が必要。出してもらえなければその銘柄は扱えない。
- 壁③表示義務は広告・申込画面・納品書の3か所。文字は10ポイント以上、ネットでは価格表示に使う文字以上の大きさ。
- 登録免許税は3万円、標準処理期間は提出日の翌日から2か月以内。ただし条件緩和で行う場合は登録免許税が不要。
通信販売酒類小売業免許とは
通信販売酒類小売業免許とは、2都道府県以上の広範な地域の消費者等を対象として、インターネットやカタログの送付等により商品の内容・販売価格その他の条件を提示し、通信手段で注文を受けて酒類を売るための免許です。全国に向けたネットショップは、これにあたります。
注意したいのは、この免許では店頭での小売ができないことです。実店舗の販売とネット販売の両方をやるなら、一般酒類小売業免許と通信販売酒類小売業免許の両方が必要になります。片方だけで両方をやってしまっている例があります。
| やりたいこと | 必要な免許 |
|---|---|
| 店頭で消費者に売る | 一般酒類小売業免許 |
| 販売場と同じ都道府県内だけに通信販売 | 一般酒類小売業免許 |
| 2都道府県以上に通信販売 | 通信販売酒類小売業免許 |
| 店頭と全国ネット販売の両方 | 両方 |
広島県内だけなら、この免許は要らない
見落とされやすい分かれ道です。販売場の所在する同一都道府県内の消費者等のみを対象とする通信販売は、一般酒類小売業免許で行えます。
つまり広島市に販売場があり、広島県内のお客様だけに届けるなら、通信販売の免許は要りません。地域限定の定期便、近隣への配達、県内向けの予約販売——こうした形であれば、一般免許の範囲内です。
壁① 扱える酒類が限られる
ここが、この免許の最大の特徴です。通信販売酒類小売業免許で扱えるのは、次のものに限られます。
| 区分 | 条件 |
|---|---|
| 国産酒類 | 前会計年度の課税移出数量が品目ごとにすべて3,000キロリットル未満である酒類製造者が製造・販売する酒類 |
| 地方特産品等 | 地方の特産品等を原料とし、年間の製造委託数量の合計が3,000キロリットル未満となる範囲で委託製造した酒類 |
| 輸入酒類 | 品目・数量の制限なし |
この3,000キロリットルという線が何を意味するか。大手メーカーのビール、日本酒、ジャパニーズウィスキーは、まず扱えません。一方で、小規模な蔵元の日本酒、クラフトビール、輸入ワインは扱えます。
ですから「何を売りたいか」で結論が変わります。大手の銘柄を並べたネットショップを考えていた方は、ここで計画の作り直しになります。逆に、地元の蔵元の酒を全国に広めたいという方には、制度がぴったり合います。
壁② 蔵元の証明書が取れるか
そして実務でいちばん時間がかかるのがこれです。国産酒類を扱う場合、申請書には酒類製造者が発行する「通信販売の対象となる酒類であることの証明書」を添付します。地方特産品等を原料とする酒類では、証明書に代えて製造委託契約書や計画書等を添付します。
つまり、蔵元が証明書を出してくれなければ、その銘柄は売れません。行政書士が代わりに作れる書類ではありません。ここは蔵元との交渉です。
- 蔵元が通信販売を認めていない場合がある(既存の特約店を守るため)
- 証明書の発行に社内手続と時間がかかることがある
- 扱いたい銘柄が複数あれば、蔵元ごとに依頼が必要
壁③ 表示義務は3か所
免許が出たあとの話ですが、知らずに開店して指摘を受けるのがここです。二十歳未満の者の飲酒防止に関する表示基準により、通信販売では次の3か所に表示が必要です。
| 場所 | 表示する内容 |
|---|---|
| 広告・カタログ (ウェブサイト) | 「20歳未満の者の飲酒は法律で禁止されている」または「20歳未満の者に対しては酒類を販売しない」旨 |
| 購入申込書 (申込画面) | 申込者が年齢を記載する欄を設け、その近接する場所に上記いずれかの旨 |
| 納品書等 (ネットでの通知を含む) | 「20歳未満の者の飲酒は法律で禁止されている」旨 |
文字の大きさにも決まりがあります。10ポイントの活字以上の大きさで、統一のとれた日本文字。そしてインターネットの場合は、酒類の価格表示に使用している文字以上の大きさとされています。価格を大きく目立たせて、注意表示を小さく置く——これは認められません。
あわせて、カタログやウェブサイトには酒類販売管理者の氏名や研修の受講事績等の表示も求められます。実店舗で標識を掲げるのと同じ趣旨です。
費用と期間——3万円が不要になる場合
登録免許税は免許1件につき3万円、標準処理期間は申請書等の提出があった日の翌日から2か月以内です(書類の補正に要する期間は含みません)。
ここで知っておいていただきたいのが、登録免許税がかからない場合があることです。通信販売酒類小売業免許申請の手引には、「通信販売を除く小売に限る」旨の条件が付された一般酒類小売業免許等の条件緩和を受けて通信販売を行う場合は、登録免許税の納付が不要と記載されています。
このほかに、証明書類の取得実費と、行政書士に依頼する場合はその報酬がかかります。当事務所の報酬は扱う銘柄数などで変わりますので、お見積りをお出ししています。
申請の流れ
- ① 対象地域を決めて必要な免許を判断する。2都道府県以上なら通信販売の免許、販売場と同じ都道府県内だけなら一般免許で足ります。
- ② 扱う銘柄が対象になるか確認する。国産は3,000キロリットル未満の製造者のものに限られます。輸入酒類は制限がありません。
- ③ 蔵元に証明書の発行を依頼する。ここがいちばん時間がかかるため、早めに動きます。
- ④ 表示義務を満たすページを用意する。広告・申込画面・納品書の3か所と、文字の大きさを確認します。
- ⑤ 酒類販売管理者を選任して申請する。販売場の所轄税務署長に提出。標準処理期間は提出日の翌日から2か月以内、登録免許税は3万円です。
▼飲食店が店内でお酒を売る場合はこちら:飲食店でお酒を販売するには?店内小売の免許と区画の分け方
「ネットでお酒を売りたい」とご相談をいただいたとき、私が最初にお聞きするのは「どの銘柄を扱いたいですか」です。免許の話より先に、ここが決まらないと前に進みません。
そして次にお願いするのが、蔵元に「通信販売の証明書を出してもらえますか」と聞いてみてくださいということです。これは私が代われない部分で、しかも断られることが実際にあります。特約店との関係を大事にしている蔵元ほど、慎重です。
広島は西条という銘醸地を抱えていて、全国に知られた蔵元が集まっています。地元の酒を広めたいという話は、制度の趣旨とも合っています。ただ、それが実現できるかどうかは蔵元との関係づくりからです。そこが整えば、免許の手続はこちらで引き受けます。
よくある質問
この免許が必要なのは2都道府県以上を対象にする場合です。販売場と同じ都道府県内だけなら、一般酒類小売業免許で通信販売ができます。まずここを確認してください。
そのうえで3つの壁があります。国産は3,000キロリットル未満の製造者の酒に限られること、蔵元の証明書が必要なこと、表示義務が3か所あること。いちばん時間がかかるのは蔵元との交渉です。
そしてすでに小売免許をお持ちの方は、条件緩和で登録免許税3万円が不要になる場合があります。新規申請の前に、ご自身の免許に付された条件を確認してください。
- 酒税法(酒類の販売業免許、免許の条件)
- 国税庁「通信販売酒類小売業免許申請の手引」(通信販売の定義=2都道府県以上、扱える酒類の範囲と3,000キロリットル要件、蔵元発行の証明書、酒類販売管理者、登録免許税3万円と条件緩和の場合の不要、標準処理期間2か月)
- 二十歳未満の者の飲酒防止に関する表示基準(広告・カタログ、購入申込書・申込画面、納品書等への表示、10ポイント以上・価格表示の文字以上)
- 国税庁「一般酒類小売業免許への条件緩和手続の手引」(条件緩和申出書、標準処理期間)
2026年10月時点の内容です。扱う銘柄や既存免許の条件によって手続が変わるため、申請前に所轄の税務署の酒類指導官にご確認ください。
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「全国にお酒を売りたい」「地元の蔵の酒を広めたい」「すでに酒販店をやっていてネットも始めたい」——通信販売の免許は、扱う銘柄と既存免許の条件で手続が変わります。新規申請か条件緩和かの判断、蔵元への証明書依頼の進め方、表示義務を満たすページの確認、申請書の作成・提出まで一貫してお任せください。