西岡行政書士事務所
EX-POLICE GYOSEISHOSHI
酒販免許ネット販売の方へ

通信販売酒類小売業免許とは?
ネットで酒を売る3つの壁

監修:西岡 祐也(行政書士)

「ネットショップでお酒を売りたい」というご相談は、年々増えています。必要になるのが通信販売酒類小売業免許です。ところがこの免許は、取れたとしても売れるものが限られるという、ほかの許認可にはない特徴を持っています。
つまずくのは決まって3か所——扱える酒類の制限、蔵元が出す証明書、そして表示義務です。しかもその手前に、そもそもこの免許が要らない場合という分かれ道もあります。順に整理します。

この記事の要点

通信販売酒類小売業免許とは

通信販売酒類小売業免許とは、2都道府県以上の広範な地域の消費者等を対象として、インターネットやカタログの送付等により商品の内容・販売価格その他の条件を提示し、通信手段で注文を受けて酒類を売るための免許です。全国に向けたネットショップは、これにあたります。

注意したいのは、この免許では店頭での小売ができないことです。実店舗の販売とネット販売の両方をやるなら、一般酒類小売業免許と通信販売酒類小売業免許の両方が必要になります。片方だけで両方をやってしまっている例があります。

売り方と必要な免許
やりたいこと必要な免許
店頭で消費者に売る一般酒類小売業免許
販売場と同じ都道府県内だけに通信販売一般酒類小売業免許
2都道府県以上に通信販売通信販売酒類小売業免許
店頭と全国ネット販売の両方両方

広島県内だけなら、この免許は要らない

見落とされやすい分かれ道です。販売場の所在する同一都道府県内の消費者等のみを対象とする通信販売は、一般酒類小売業免許で行えます。

つまり広島市に販売場があり、広島県内のお客様だけに届けるなら、通信販売の免許は要りません。地域限定の定期便、近隣への配達、県内向けの予約販売——こうした形であれば、一般免許の範囲内です。

ただし運用には注意が必要です。サイトを公開すれば県外からも注文が入ります。一般免許のまま県外へ売ってしまえば、免許の範囲を超えた販売になります。県内限定で運用するなら、配送先を県内に限る仕組みをサイト側で作っておく必要があります。「県内のお客様限定」と書くだけでは足りません。

壁① 扱える酒類が限られる

ここが、この免許の最大の特徴です。通信販売酒類小売業免許で扱えるのは、次のものに限られます。

通信販売で扱える酒類
区分条件
国産酒類前会計年度の課税移出数量が品目ごとにすべて3,000キロリットル未満である酒類製造者が製造・販売する酒類
地方特産品等地方の特産品等を原料とし、年間の製造委託数量の合計が3,000キロリットル未満となる範囲で委託製造した酒類
輸入酒類品目・数量の制限なし

この3,000キロリットルという線が何を意味するか。大手メーカーのビール、日本酒、ジャパニーズウィスキーは、まず扱えません。一方で、小規模な蔵元の日本酒、クラフトビール、輸入ワインは扱えます。

なぜこんな制限があるのか。通信販売は販売場を持たずに全国へ売れるため、制限がなければ大手の酒が価格競争で全国に流れ、地域の酒販店が立ち行かなくなる——その懸念から設けられた仕組みです。裏を返せば、この免許は小さな蔵元と輸入酒のための制度だということです。

ですから「何を売りたいか」で結論が変わります。大手の銘柄を並べたネットショップを考えていた方は、ここで計画の作り直しになります。逆に、地元の蔵元の酒を全国に広めたいという方には、制度がぴったり合います。

壁② 蔵元の証明書が取れるか

そして実務でいちばん時間がかかるのがこれです。国産酒類を扱う場合、申請書には酒類製造者が発行する「通信販売の対象となる酒類であることの証明書」を添付します。地方特産品等を原料とする酒類では、証明書に代えて製造委託契約書や計画書等を添付します。

つまり、蔵元が証明書を出してくれなければ、その銘柄は売れません。行政書士が代わりに作れる書類ではありません。ここは蔵元との交渉です。

だから私は、免許の相談より先に蔵元へ当たってくださいとお伝えしています。免許が取れても証明書がなければ売るものがありません。順番を逆にすると、時間とお金を無駄にします。

壁③ 表示義務は3か所

免許が出たあとの話ですが、知らずに開店して指摘を受けるのがここです。二十歳未満の者の飲酒防止に関する表示基準により、通信販売では次の3か所に表示が必要です。

通信販売で必要な表示
場所表示する内容
広告・カタログ
(ウェブサイト)
「20歳未満の者の飲酒は法律で禁止されている」または「20歳未満の者に対しては酒類を販売しない」旨
購入申込書
(申込画面)
申込者が年齢を記載する欄を設け、その近接する場所に上記いずれかの旨
納品書等
(ネットでの通知を含む)
「20歳未満の者の飲酒は法律で禁止されている」旨

文字の大きさにも決まりがあります。10ポイントの活字以上の大きさで、統一のとれた日本文字。そしてインターネットの場合は、酒類の価格表示に使用している文字以上の大きさとされています。価格を大きく目立たせて、注意表示を小さく置く——これは認められません。

あわせて、カタログやウェブサイトには酒類販売管理者の氏名や研修の受講事績等の表示も求められます。実店舗で標識を掲げるのと同じ趣旨です。

ここはネットショップの設計に直接関わる部分です。カート機能の申込画面に年齢記載欄を入れられるか、注文完了メールに文言を入れられるか——使うECサービスによって手間が変わります。サイトを作り込む前に確認しておくのが安全です。

費用と期間——3万円が不要になる場合

登録免許税は免許1件につき3万円、標準処理期間は申請書等の提出があった日の翌日から2か月以内です(書類の補正に要する期間は含みません)。

ここで知っておいていただきたいのが、登録免許税がかからない場合があることです。通信販売酒類小売業免許申請の手引には、「通信販売を除く小売に限る」旨の条件が付された一般酒類小売業免許等の条件緩和を受けて通信販売を行う場合は、登録免許税の納付が不要と記載されています。

つまりすでに酒類小売業免許をお持ちの方が通信販売を始める場合、新規の免許申請ではなく条件緩和の手続で進められることがあり、その場合は3万円がかかりません。どちらの手続になるかは免許に付された条件によって変わりますので、所轄の税務署でご自身の免許の条件を確認してください。既存の酒販店の方は、ここを知らずに新規申請をしてしまうと損をします。

このほかに、証明書類の取得実費と、行政書士に依頼する場合はその報酬がかかります。当事務所の報酬は扱う銘柄数などで変わりますので、お見積りをお出ししています。

申請の流れ

▼酒類販売業免許そのものの全体像は、こちらで詳しく解説しています:酒類販売業免許とは?種類・4要件・費用と広島の窓口
▼飲食店が店内でお酒を売る場合はこちら:飲食店でお酒を販売するには?店内小売の免許と区画の分け方
現場の話 行政書士・西岡より

「ネットでお酒を売りたい」とご相談をいただいたとき、私が最初にお聞きするのは「どの銘柄を扱いたいですか」です。免許の話より先に、ここが決まらないと前に進みません。

そして次にお願いするのが、蔵元に「通信販売の証明書を出してもらえますか」と聞いてみてくださいということです。これは私が代われない部分で、しかも断られることが実際にあります。特約店との関係を大事にしている蔵元ほど、慎重です。

広島は西条という銘醸地を抱えていて、全国に知られた蔵元が集まっています。地元の酒を広めたいという話は、制度の趣旨とも合っています。ただ、それが実現できるかどうかは蔵元との関係づくりからです。そこが整えば、免許の手続はこちらで引き受けます。

よくある質問

Q通信販売酒類小売業免許はどんなときに必要ですか?
A2都道府県以上の広範な地域の消費者等を対象として、インターネットやカタログで条件を提示し、通信手段で注文を受けて酒類を売る場合に必要です。全国に向けたネットショップはこれにあたります。
Q広島県内だけに向けてネット販売するなら、この免許は必要ですか?
A必要ありません。販売場の所在する同一都道府県内の消費者等のみを対象とする通信販売は、一般酒類小売業免許で行えます。ただし県外から注文が入っても売れないため、対象地域を限定する運用が必要です。
Q通信販売で扱える酒類はどこまでですか?
A国産酒類は、前会計年度の課税移出数量が品目ごとにすべて3,000キロリットル未満である酒類製造者のものに限られます。地方の特産品等を原料として委託製造した一定の酒類も対象です。輸入酒類には品目や数量の制限がありません。
Q蔵元の証明書とは何ですか?
A国産酒類について、酒類製造者が発行する「通信販売の対象となる酒類であることの証明書」です。申請書に添付します。蔵元から発行してもらえなければその銘柄は扱えないため、申請準備の実質的な第一歩になります。
Qネットショップにはどんな表示が必要ですか?
A広告やカタログには20歳未満の飲酒が法律で禁止されている旨または20歳未満には酒類を販売しない旨、申込画面には年齢記載欄とその近接する場所に同じ旨、納品書等には20歳未満の飲酒が法律で禁止されている旨を表示します。文字は10ポイント以上の統一のとれた日本文字とし、インターネットの場合は価格表示に使用している文字以上の大きさにします。
Q登録免許税3万円がかからない場合はありますか?
Aあります。通信販売酒類小売業免許申請の手引では、「通信販売を除く小売に限る」旨の条件が付された一般酒類小売業免許等の条件緩和を受けて通信販売を行う場合は、登録免許税の納付が不要とされています。すでに小売免許をお持ちの方は、新規申請ではなく条件緩和で進められるかを所轄の税務署に確認してください。
まとめ

この免許が必要なのは2都道府県以上を対象にする場合です。販売場と同じ都道府県内だけなら、一般酒類小売業免許で通信販売ができます。まずここを確認してください。

そのうえで3つの壁があります。国産は3,000キロリットル未満の製造者の酒に限られること、蔵元の証明書が必要なこと、表示義務が3か所あること。いちばん時間がかかるのは蔵元との交渉です。

そしてすでに小売免許をお持ちの方は、条件緩和で登録免許税3万円が不要になる場合があります。新規申請の前に、ご自身の免許に付された条件を確認してください。

この記事の根拠
  • 酒税法(酒類の販売業免許、免許の条件)
  • 国税庁「通信販売酒類小売業免許申請の手引」(通信販売の定義=2都道府県以上、扱える酒類の範囲と3,000キロリットル要件、蔵元発行の証明書、酒類販売管理者、登録免許税3万円と条件緩和の場合の不要、標準処理期間2か月)
  • 二十歳未満の者の飲酒防止に関する表示基準(広告・カタログ、購入申込書・申込画面、納品書等への表示、10ポイント以上・価格表示の文字以上)
  • 国税庁「一般酒類小売業免許への条件緩和手続の手引」(条件緩和申出書、標準処理期間)

2026年10月時点の内容です。扱う銘柄や既存免許の条件によって手続が変わるため、申請前に所轄の税務署の酒類指導官にご確認ください。

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